プロローグ-2
こんな時間に出歩くのは校則違反ではあるのだけど、俺はを大して校則を意識したことはない。
不意に前方にある電柱の影から、全身黒ずくめの怪しい人物が姿を現した。
「動かないで」
女性、というより女の子の声。顔は暗くてよく見えない。
「なんか用?」
年上ではなさそうなので、ため口で話す。
「あなたを殺しにきたのよ」
「は?」
なんの冗談だと思っていると、少女(?)は懐から何かを取り出した。
「あなたは私のターゲット。だからおとなしく死んで」
雲に隠れていた月が顔を覗かせたのか、月明かりに照らされて少女の顔と手元が露になった。
予想通り女の子で、髪はショートカット。そしてその手に握られていたのは――。
「!」
拳銃だった。
ゲームなんかでは見たことあるけど、俺は銃マニアではないので実物を見たことはない。
だから少女が握っているのが本物なのか、あるいはモデルガンなのかは判別できない。
「はは、おもしろい冗談だな……」
必死に笑ってみるが、少女の持っているそれが本物なのだと思うと、上手く笑うことができなかった。
「冗談ではないわ。私はレン。暗殺者だもの」
暗殺者が名乗っていいのか、なんてツッコミをいれる余裕はない。
「一ノ瀬という人物に心当たりはある?」
なぜか急に話題が変わった。というか一ノ瀬…?
「あ、あったら、なんだってんだよ……」
恐る恐る答えると、少女――レンは握っていた拳銃を懐に閉まった。
「そう。だったら、しばらくは生かしてあげる」
そう言って去っていくレン。
俺は何がなんだかわからず、ただただぽかーんとその後ろ姿を見ているしかできなかった。