巡り巡る世界-1
(ああ〜……っと、こりゃあ……どういう事かなっと……)
だだっ広く青い空……呑気に飛び交う小鳥達……。
爽やかな空の下、ファンの城の敷地内にある演習場。
その中心に、何故かゼインは突っ立っていた。
演習場をぐるっと囲む見学席にはファン国王、その弟夫婦に宮廷魔導師エン。
カリーにキャラに……後、何だか他にも色々。
特に目につくのは真っ黒なデカイ猫。
大型犬ぐらいのその猫は、金色の瞳をキラキラさせて長い尻尾を振っている。
そして、目の前で腕を組んで仁王立ちしているゼビア魔導師アース。
スランよりも背が高く、筋肉質な男が仁王立ちになると迫力がある。
アースは怒りを我慢しているようで、左だけの金色の視線が熱くて痛い。
「……変われ」
「はい?」
ドスの効いた低〜い声で命じられ、ゼインは間抜けに返事をした。
「魔物に変われ!俺達を巻き込んだ事、後悔させてやるっ!!」
怒鳴ったアースの手の平に金色の光が宿ったかと思うと、そこにはロングソードが現れていた。
「なっ?!そっちが勝手に巻き込まれたんじゃねぇか!!」
無茶苦茶感謝してるし、誠心誠意お礼もしたい。
出来る事があったら何でも言ってくれ……そう思うが、それが何故バトルなのか?
「うるせぇっ!人の女と散々寝やがって……ぶっ殺す!!」
アースは問答無用とばかりにロングソードを振りかぶって突っ込んで来る。
「だっ?!ありゃアンタと会う前の話だろっ?!」
得物を持っていないゼインは慌てて両腕を魔物に変え、頭上で交差させた。
ギャキンッ
ロングソードは容赦無くゼインに振り降ろされ、それをゼインは長い爪で受け止める。
「だから何だ!!」
「何だって……」
ギリギリと体重を乗せてくるアースを、ゼインは余裕で受けていた。
身長差は20センチはあるのに力じゃ勝てない……そこがまた、アースのかんに触った。
「ムカつくチビだ」
ポツリと呟いたアースの言葉に、ビキビキッとゼインの額に青筋が浮かぶ。
「どぅあれがチビだとっ?!」
ゼインはグググとロングソードを押し返した。