巡り巡る世界-9
「奴は世間知らずの甘ちゃんなんだよ。大分マシになったにはなったが、まだまだだ」
だから徒歩で帰りつつ、世界の広さと世間の常識を教えてやって欲しい。
ぶっちゃけ1人で戻れば良いのだが『1人じゃ無事に帰れない自信がある』らしい。
「私達なら冒険者だしぃ〜ゼインなら何かとんでもない事になっても守れるでしょ?それに私も暗殺者だから、そこらへんの事も教えてあげられるってわけ」
それで、今回の色んな事は無かった事にしてくれるそうだ。
「当座の資金も出してくれるし、成功報酬もあるってさ」
盛大に迷惑かけた割には寛大だなあ、とゼインは笑う。
「あ……それでか?」
さっきのバトルはゼインの力量を知る為だったのか?
一応、王族の護衛になるのだ……相応しいかどうかを調べていた訳だ。
『そういう事。後、魔力の使い方とかも教えてやりたくてな』
人間の魔法使いじゃ教えてやれない、魔獣のグロウだから教えてやれる。
魔物になってしまったというゼインの事を聞いたグロウは、直ぐにゼビアから転移魔法でファンまで来たのだ。
『まあ……バトルはアースの醜い嫉妬心が主な理由だけどな……』
「うっせぇ」
アースは腕を組んでブスッとする。
過去の男に嫉妬する程キャラが好きなのだと分かり、ゼインはクスクス笑った。
「笑うな」
「いやいや……キャラは良い女だよ?」
「てめぇに言われなくても分かってんだよ!馬鹿チビ!」
「チビチビ言うなっ!!」
「何度でも言ってやらぁっ!!チビチビチビチビチビドチビっ!!」
「今、何気にドチビっつったな?!」
「だからどうした!!」
「許さねぇっ!再戦だ!表に出ろっ!!」
「上等だぁ!」
怒鳴り合いながら医務室を出ていく2人を、カリーとグロウは呆れながら見送る。
その後、修理中の演習場に乱入した2人は更に演習場を破壊……ファン国王にこっぴどく叱られる事となったのだった。