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アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

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巡り巡る世界-5

『力が分かるだろ?熱いっつうか、ざわつくっつうか……それを下腹に溜めろっ!』

 何度も言わせるな、と猫はゼインの頭に爪を立てる。

『グ……ウゥ』

 何者かは知らないが猫の言う事は正しい。
 ゼインは身体の内側に意識を集中してみた。
 いつも身体の中をぐるぐると駆け巡っている何か……これの事か?とゼインは下腹に力を入れてみる。
 すると、その何かは熱を持ってぎゅるぎゅると下腹に集まってきた。

『グッ……ググ……』

 熱くて何だか不快な感じにゼインは顔をしかめる。

『そうだ。今度はそれを背中から外に出す』

 猫の言葉に従い、熱を背中に移動させて……それを解放させた。

ブワッ

 すると、アースが吹き出している金色の陽炎と同じようなモノがゼインの身体を包み込んだ。
 それは青白く、パチパチと火花を散らしている。
 怪我をした時にたまに出てくる光だ。

『これがお前の魔力……魔物の力だ』

 人間だった時は魔力を持っていなかったゼインだが、魔物となったからには必然的に魔力を持つ事になる。
 人間の魔法使いのような呪文や印や陣を必要としないそれは、人間の持つ魔力とは質が違う。
 人間の魔力は意識して使うものだが、魔物や精霊……そして、その祖となる魔獣の魔力は身体能力と同じ。
 見る力や聞く力と同じで自然に使うものだ。
 ただ、ゼインは元は人間で魔力を持っていなかった……魔物の魔力の存在に気づかず、身体能力だけを使っていた。
 だから魔力の存在を意識させれば、高い身体能力と併用して魔力が扱える筈……と、猫は教える。

『慣れてくりゃ自然と使えるが……今はそれを右手に集中させろ』

『グッ』

 ゼインは短く返事をして、握った右手に意識を集中した。
 身体を包んでいる青白い光が、パチパチと火花を散らして右手に集まる。
 ふと前を見ると、アースも同じように金色の陽炎を、構えたロングソードに集めていた。

『グウ?』

 人間の魔力もあんな使い方が出来るのか、とゼインは目だけで猫を見る。

『あ?ああ……アースは半分魔獣だからな』

 人間のように使う事も出来るし、魔獣のように使う事も出来る。

『ほら、集中集中』

 再び頭に爪を立てられ、ゼインは慌てて集中する。

 熱くて不快な魔力は、意識すると凄く力強い。
 正に『力』……自分の一部……。

『よし。反対の手も同じように意識してみろ』

 今度はちょっと意識しただけで力が凝っていった。
 これなら魔力を手足のように……自然に、自由に使える。
 無意識にゼインの口角が引き上がった。



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