巡り巡る世界-4
『グ?』
頭に乗ったのは、さっきまで見学席に居た黒い猫。
猫は金色の目を細めると、ゼインの鬣を噛んでクイッと引っ張った。
『前見ろ。来るぞ』
『!?』
人間の言葉を発した猫にゼインは思わず振り向こうとしたが、しなやかな尻尾がゼインの鼻先をピシリと叩く。
『前見ろっつったろ。大きく1歩前進』
良く分からないがゼインは言われた通りに大きく踏み出した。
ドコオォン
一瞬前までゼインが居た場所に魔道弾が直撃し、土塊がゼインを襲う。
『次、3歩左……飛べっ!』
猫の言う通りに動くと面白いように魔道弾を避けられた。
『いいか、体内に力を感じるだろ?』
『グ?』
何の事か、とゼインの頭は疑問符だらけになる。
『いいから、それを下腹に溜めろ。まずはそれからだ……っと、着地して直ぐ前に飛べ。奴を吹っ飛ばすぞ』
空中で会話をしていた所に、更に魔道弾が飛んでくる。
ゼインはそれを回転する事で避けると、ズンッと着地して一気に前へ飛んだ。
激しい攻防のせいで辺り一面土煙だらけだったが、嗅覚鋭いゼインにはアースの場所が分かる。
「い゛っ?!」
煙を掻き分けて突然飛び出して来たゼインを見て、アースは慌てて結界を張る。
ドンッ
真正面からもろにぶち当たり、アースは結界ごと見事に吹っ飛ばされた。
ズガガンッ
「アース?!」
背中から壁にめり込んだアースに、今度はキャラが悲鳴をあげる。
『下がって距離をとれ』
ザッと後方に飛んだゼインを追いかけるように、アースの居る場所から金色の陽炎が吹き出した。
「いってぇなぁ……くそチビが……」
ガラガラと瓦礫の中から出てきたアースは、金色の陽炎を纏っていた。
それでも額から流れる血を見るに、無傷では無いようだ。
『グウゥ』
ゼインは姿勢を低く構えてアースの動きを探る。
『だから、身体能力に頼るな。内なる力を使えってんだ。負けたいのか、このチビ』
『グアッ』
チビって言うな、と唸るゼインの鼻先に再び尻尾が叩きつけられた。