巡り巡る世界-10
「で?城、出入り禁止になったんだ?」
話を聞いたケイはモップにもたれて呆れた声を出した。
「ああ〜…まあ、そういう事……」
アースはばつの悪い顔で雑巾を絞り、ゼインはゴミを集めつつ耳を伏せて尻尾を足の間に入れている。
「馬鹿じゃねぇの?ゼインは良いとしてアースは一応貴族だろ?」
しかも、ゼビアのナンバー2の地位に居るクセに、他国に迷惑かけたうえに出入り禁止とは……ゼビア王が聞いたら切腹ものだ。
「……反省してます……」
「相変わらず姫様絡むと暴走すんだから……少しは大人になれよ?」
「あい」
デカイ図体にデカイ態度のアースだが、実はケイより年下。
普通の事で怒られて素直に反省している姿はまるで弟だ。
「ゼインもチビなのは事実なんだから、いちいちキレない!」
「あぅ」
ざまあみろ、とばかりにアースを見ていたゼインにもケイの雷が落ち、ゼインはしゅうんと項垂れる。
「ったく……仲良くしなさい!」
「「はぁい」」
まるで託児所の先生になったような気分に、ケイはうんざりだ。
しおらしく返事をしたアースだったが雑巾片手にバケツを持つと、わざとゼインの頭にぶつける。
「いって」
「おう、悪ぃ」
わざとらしい行動に噛みつこうとするゼインと、やるか、と構えるアースにケイのモップが叩きつけられた。
「やめいっ!」
ガッ ゴッ
遠慮なく振り下ろされたモップの威力にゼインとアースは頭を抱えてしゃがみ込む。
「なぁにやってんのよぅ〜早く掃除終わらせて。片付かないじゃん」
そこにカリーが窓から顔を出して文句を言う。
ここはケイの家の屋根裏……物置と化してした場所をアメリアの部屋にするのだ。
ゼビアに行くのはゼインとカリーだけ。
やりたい事を見つけたアメリアはファンに残り、魔法学校が出来るまでケイの家に下宿して近所の食堂で働く。
字の読み書きや簡単な計算などはケイでも教えてやれる。
「一緒にゼビアに行ったら向こうに学校あるのにぃ〜」
古いベットを補修してペンキを塗り直すカリーは、ぷっと頬を膨らませていじけていた。
「……だって……それだとケイさんと離れちゃうじゃない……」
もじもじと恥ずかしそうに言うアメリアにカリーは苦笑する。