3-9
「...やっぱりさ、いい思いはしないよね。俺が絡まれてるの見たら」
「元ちゃん....」
「俺が悪い。ほんと、相手にしなけりゃいいんだけどさ」
「ううん.....」
「でもね、ほんと、目に入らないんだよ。みーちゃん以外は」
美帆は、腕に顔を埋めたまま頷いた。
涙目で、顔を赤らめた。
さらっとそういうことを言える元が、堪らなく好きなんだ。
「うん....ありがとう。.....元ちゃん、好きだよ」
「俺も、好きやねん」
変な関西弁ではぐらかす。
「ははっ。変なのー」
「たまにはいいでしょ」
「元ちゃん、今までのままでいいよ。私、元ちゃんのこと信じてますから」
「じゃあその信頼を裏切らないようにしないとな」
「ほんと、お願いしますよ。元ちゃん」
そう言って、美帆は腕に頬を寄せた。
「みーちゃん、映画。観ないの?」
「うーん...」
寄せた頬をスリスリさせる。
「今日は.....このまま甘えたい気分......です」
「おっ。俺、安売りはしないよ?」
そう言って、左手を美帆の頬に添える。
細長い指先が耳から首筋、鎖骨までをいやらしく這う。
視線の先は映画だが、その指はまた別の意思を持った生き物のようだ。