3-8
(そりゃあ......モテるよねー.....)
自分の右手の薬指の指輪を指先で撫でながら、美帆はクッションに顔を埋めた。
淹れ立ての、コーヒーの香りが漂う。
「どした?みーちゃん」
両手にカップを持った元が、隣に戻る。
「...ううん」
「へんなの」
「.....コーヒー、おいしい」
「あざーす」
「やっぱり、元ちゃんみたいには上手に淹れられないなぁ」
「そんなことないっしょ」
カップをテーブルに置いた美帆は、元の右腕に抱き着いて顔を埋めた。
「みーちゃん?どした?映画途中だよ?」
「うん...」
顔を上げずに返事したまま、黙ってきつく腕を抱いた。
暫しの沈黙の後、元が切り出した。
「.......みーちゃん。今度から、あそこで待ってるのやめようか?」
「...え?」
美帆は、驚く。
自分の細やかな不安の種は、芽が出る前から元に見抜かれていたのか。