3-10
「.....んっ...」
「あ、みーちゃん。いま“女”の声が出たね」
「....そんな....あっ...」
「撫でてるだけだよ?」
視線は、映画から外さない。
「...いじわるぅ...」
「そう、俺ってば意地悪だから」
いたずらっぽく笑うその顔には、ほんの少しだが幼さも見える。
「ねぇ、美帆。どうしてほしいの?」
俯いた顔を覗き込みながら、耳元で囁く。
こういう時に「美帆」と呼ばれると、それだけで全身が粟立つ。
年下のくせに.....
答えなんか知ってるくせに.....
そう思ってもその指から逃げられない自分。
不安も何もかも、見透かされているような感覚。
結局、元には抗えない。心地良い敗北感。
窓の向うに響くサイレンが遠のくように、美帆も理性を見失っていった。