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「げんちゃん、今日も手ぶら?」
「あぁー」
そういいながら元は両手で自身の胸を隠した。
「つまんねんだよオヤジ」
「....てっちゃん、折るよ?」
鉄弥は中学生の頃に元に突っ掛かって、前歯と右腕を折られたことがある。
今となっては二人の良いネタだが、その時鉄弥は心の底から誓った。
“二度と元と喧嘩しない”
「....冗談だよ。...あれ、てっちゃんビビッた?」
「うるせーなー!だいたいさぁ...」
正門を抜けて二人で騒いでいると
「兄貴!テツくん!」
まだ幼さが残る女の子が二人、駆け寄ってきた。
1人は快活に声を上げて、一人は控え目にその後ろを追いながら。
「兄貴、テツくんと遊びにいくの?」
「ああ」
「ご飯は?」
「あー...いらねえかな。適当に食って帰る」
「分かった!あ、このまま真紀ちゃんうちに来るんだけどさ、一緒にうちでご飯食べてもいいよね?」
「好きにしな。でもさ、絢はいいだろうけど真紀ちゃんは遅くなって大丈夫なの?」
元が軽く覗き込むように伺う。