best friend-1
四月、新しい季節。
草花は芽吹き、土の中で眠っていた虫達も顔を出す。
新しく何かが始まりそうで、期待や希望に満ち溢れたこの季節が、私はたまらなく嫌いだった。
しかし、嫌いといえども、“これではいけない”と、懲りずに新しい気持ちで外の世界に臨もうとする自分もかつては存在していた。
でもその淡い期待は、すぐに泡のように弾けて消えた。
自分の努力だけではどうにもならないことがあるのは、充分身に沁みていた。
自分だけ変わろうとしたって、周りが変わってくれなければ私は本当に生まれ変われないんだ。
それを理解するまで、結構な年月が私には必要だった。
「うわっ、寺岡だ」
「近寄んなよ、うぜえ」
「マジでキモいよね」
「死ねばいいのに」
当たり前のように投げかけられる悪意の声。
小学校高学年の頃から始まったそれは今の今まで続いてきた。
でも、それも今日で終わる。
今日から私は、あんた達と違う世界で生まれ変わる。