best friend-7
私の住んでる街からは少し離れた所にある、県内でも一、二を争う進学校。
私は毎日バスに揺られながらそこへ通う。
県内屈指の進学校だけあって、各中学校から入学できるのも、ほんの一握り。
私の中学はバカばっかりだったから、A高に進学したのは私一人だった。
それを知ったとき、私は小躍りしてしまうくらい喜んだ。
私を知る人がいないということは、まっさらな状態から人間関係を築き上げることができるということだ。
だから、生まれ変わるチャンスは今しかない。
“高校デビュー”と、あのバカ共に思われたって構わない。
絶対恵が悔しがるくらい素敵な親友を作って、毎日笑って過ごしてやる。
なぜか、根拠のない自信がこみ上げてきて、顔に笑みがこぼれた。
友達の輪の中心で笑う、“人気者の寺岡里奈”の姿が再び脳裏に蘇ってくる。
この学校ならきっと、前みたいな自分になれる。
私はそう確信すると、自分のクラスの引き戸に手をかけ、ゆっくり横に引いた。
……暗い。
友達のいない私が言うのも気がひけたが、まだ始業のベルが鳴らない自由時間なのに、誰一人口を開かないでいた空間を見ると、そう思わずにいられなかった。
みんな自分の席について、本を読んだり携帯をいじったりしているだけ。
おしゃべりなんて誰もしていない。
それに……みんな地味で、冴えなくて、想像してたクラスメートとのギャップに少したじろいだ。
始めが肝心と、ダサく見られないように制服のスカートを五回もまくるほど気合いを入れた自分が、むしろ浮いていた。
みんな、律儀に膝下スカートを着こなしていた。
本当に、親友なんてできるのかな。
私は急に不安になって、小さくため息をついた。
でも、まだ初日だし第一印象だけで決めつけるのはよくない。
とりあえずは様子見してみよう。
なんとかそういう結論に至らせると、私は自分の席について、暇つぶしのように携帯を開いた。
家族の連絡先しか入っていない携帯は、専ら小説サイトを読むためだけのツールに過ぎない。
高校に入ったら、電話帳にたくさんの友達の名前を登録するつもりだった。
果たして、それが実現するのはいつになるのだろう。
私はまたため息をついて、小説の続きを読み始めた、その時だった。