best friend-17
「う、うん、大丈夫……」
と言い掛けると、テルヒコくんはハッと気まずそうに目を逸らし、ガタッと席から立ち上がって教室を出て行ってしまった。
テルヒコくんの行動が理解できずに首を傾げていたその時、私は背中をポンと叩かれた。
「里奈……おはよ」
いつもより元気がない恵子の声が私の背中に投げかけられた。
テルヒコくんは、きっと恵子の顔を見て、驚いて教室を出て行ったんだ。
私は彼女の顔をどうしても見ることができず、挨拶も返せず俯いたまま黙り込んでいた。
それより何より、私にあんな目に合わされたのに、挨拶をしてくる恵子が信じられなかった。
下を向いていると、スッと目の前に昨日図書館に忘れてきた英語のグラマーの教科書とノートが差し出されてきた。
「あの……昨日、里奈がいきなり帰っちゃったから、あたしが里奈の教科書とノート預かっておいたからね……」
「う、うん……ありがと」
お互い顔を合わせないまま、ぎこちない言葉を交わし合った。
黙り込む私に彼女は突然、
「里奈……、これ読んで」
と、四つ折りにされた一枚のルーズリーフを差し出してきた。