best friend-16
次の日、いくらか冷静になった私は、自分のしたことに震えが止まらなかった。
夢であって欲しいと思っても、腫れ上がった拳と、爪の間に残る恵子の血の塊が、紛れもなく現実なんだと、私を責め立てていた。
憎しみにかられていたとはいえ、私のしたことは恵のそれに匹敵するほど、いやそれ以上に残酷なことだった。
でも恵子に対しては申し訳ないという気持ちなどなかった。
怖かったのは、自分のしたことが周囲に、特にテルヒコくんにバレてしまうことだった。
私はバカだ。
恵みたいに、周りにバレないようにジワジワ真綿で首を絞めるように追い詰めてやればよかったんだ。
恵子が登校してきて、昨日の出来事を洗いざらいみんなにぶちまけたら、私の高校生活は終わってしまう。
どうしよう……。
重い足取りで学校に着くと、恵子の姿はなかった。
あれほどの怪我をしたから、学校に来れないのかもしれない。
安堵した反面、いつまでも逃げ切れる状況じゃないことに膝が震えていた。
やっぱり恵子と顔を合わせるのが怖い。
顔を腫らした彼女を見て、テルヒコくんが彼女を哀れみ、クラスのみんなが私を犯罪者のような目で見てくることが容易に想像できて、私は自分の席に着いてもガタガタ震えながら俯いていた。
「寺岡、震えてるけど寒いの?」
隣の席のテルヒコくんが不思議そうな顔で見つめてきた。
いつもと変わらぬ彼の様子に、恵子は昨日の出来事を話さなかったんだと思い、束の間の安心感を得られた。