best friend-15
憎しみでいっぱいなはずなのに、なぜか笑いまでこみあげてきた。
今、私が置かれている状況は、まるで五年生のときの恵のそれと変わりがなかったからだ。
自分の好きな人が、自分の親友を好きになった時の惨めさ、抑えられない嫉妬、今ようやくわかった。
イジメなんて最低な人間のすることだと思ってたし、そんな人間にだけはなるまいと思っていた。
でも、不思議……。
今なら恵の気持ちがわかるし、ほんの少しだけ恵を好きになれたような気がする。
恵、あの時のあなたはきっとこうしたかったんだよね。
私は、恵子の肩をポンと優しく叩いた。
俯き加減の彼女は、ゆっくり顔をあげて私を見た。
私は、いつも見せるような穏やかな笑顔を恵子に向けた。
恵子は少し驚いて目を見開いたが、私の笑顔につられたように、微笑み返してくれたその刹那、
「人をコケにすんのもいいかげんにしろや!!」
と、私は恵子の鼻っ柱に、思いっきり拳を振り下ろしていた。
ギャアアと言う悲鳴と共に恵子の体がアスファルトに叩きつけられる。
すかさず私は恵子に馬乗りになって、何度も拳を振り下ろした。
手についた鼻血が不愉快極まりなくて、そばに落ちていたテニスボールほどの大きさの石を握りしめ、彼女の顔にそれを振り下ろした。
「里奈っ、やめて!
痛っ、痛ぁぁぁい!!」
恵子が必死でもがく姿が滑稽でたまらなかった。
イジメられていた私の姿は、こんな風に可笑しかったんだろうな。
私は半笑いで恵子をしばらく殴り続け、ほとんど虫の息状態になったのを確認すると、彼女の顔にペッと唾を吐き捨て、最後に恵子のお腹を思いっきり蹴飛ばしてから、その場を去った。