best friend-14
気付けば、見慣れた自分の家の近所を歩いていた。
図書館に教科書やノートを忘れてきたけど、そんなことどうでもよかった。
涙がポロリと零れてくる。
恵子は、私を裏切った。
悲しくて辛くて、涙しか出て来なかった。
両手で瞼をこすりながら、俯いて歩いていると、
「里奈……?」
と、後ろから声をかけられた。
聞き慣れた声にゆっくり振り向くと、恵子が申し訳なさそうな顔で立っていた。
「…………」
こんな遠くまで追いかけてくれたことに心が動かされかけたけど、今はとてもじゃないけど、恵子と話をしている余裕なんてない。
すると恵子は深々と頭を下げて、
「里奈……、ごめんね。
あたし、里奈に今までずいぶんひどいことしてたんだね。
今頃になって里奈の気持ちがわかった……。
本当に、本当にごめんなさい……」
と、涙声で謝ってきた。
アスファルトに黒いシミがポツポツ滲んでいった。
それは恵子の足元だけじゃなく、私の足元にも。
涙で恵子の顔がぼやけて見える。
「もし……里奈が許してくれるなら、前みたいに戻りたい……」
恵子は顔を涙でグシャグシャにしながら震えた声でそう言ってきた。
瞬間、私の頭の中で何かがはじけた。
もし私が許せば、恵子はのうのうとテルヒコくんの横で幸せそうに笑うんだ。
私もテルヒコくんも失わずに、今まで通り学校で楽しく過ごすんだ。
私だけが、時には二人に遠慮して気を遣って……。
そう考えると、一気に目の前のこの女に嫉妬の炎が湧き上がった。
もう、恵子に対して憎しみしか出て来なかった。