best friend-10
本物の恵なら、きっと慌てふためいたふりをして、わざと男子の前でスカート脱がしていただろう。
もしくは、スカートを隠したり、ハサミを入れたり。
でも、スカートは私の枕の横に綺麗に畳まれて置いてあった。
私はスカートを広げて、念入りに穴をあけられてないか確認してみたが、ハサミを入れられた形跡はどこにもなかった。
この人はやっぱり恵じゃない……?
私は勇気を出して乾いた唇を開いた。
「あの、名前……」
恵もどきは、私に向かってポンと両手を合わせた。
「ああ、里奈ちゃんが保健室にいる間ホームルームで自己紹介したんだ。
最後に先生が、里奈ちゃんのこと名前と出身中学だけ紹介してくれたの。
N市から来てんだ。
ちょっと遠いんだね」
どうやら、なんで私の名前を知っているのかという質問として捉えていたらしい。
屈託のない笑顔が、親友だった頃の恵を思い起こさせた。
「あの……、そうじゃなくて……あなたの名前……」
そこまで言うと、彼女は“ああ”と恥ずかしそうに長いサラサラの髪をかき上げてから私に手を差し出した。
「あたし、ケイコって言うの。
恵って字に子供の子。よろしくね」
彼女の口から“メグミ”と言う言葉が出てくると、やはり焦る。
でもよく見ると、この恵もどきはやっぱり恵とは違う。
声までそっくりなドッペルゲンガーだけど、話し方、表情の柔らかさ、そして私に対する態度が恵と全然違う。
私は、恵もどき……もとい、恵子の手をそっと握りしめ、
「こちらこそ、よろしくね、恵子ちゃん」
と、小さな声で言った。