生徒会へようこそ【MISSION'5'生徒会を再建せよ!】-8
30分後、僕らは早羽さんの家の前に立っていた。
「あ、あのさ…宝さん、あの、本当に早羽さんに…?」
僕が恐る恐る宝さんの方に顔を向けると、彼女はガシャンガシャンとガラス戸をノックしていた。
宝さんんんんんん!!
本人に聞くってそんなデリケートな問題どうやって聞くつもりなんだよぉぉぉ!!
悶絶している僕を他所に無情にも戸が開いて、早羽さんがひょこっと顔を出した。
僕が知ってるいつもの早羽さんでホッとした。
「寿絵瑠ちゃんに…かすみちゃん?どうしたの?まぁ、それは中でいいか。入って」
「お邪魔します」
もう、成るように成れだ。
「お、お邪魔します…」
「おばあちゃん、ありがとうございます」
前は玄関までだったけど今回は早羽さんの部屋に入れてもらってしまった。
目のやり場がなくて一点を見つめたまま座っていると、おばあちゃんがお茶を持ってきてくれた。
お抹茶だ…。茶道教室通ってるんだもんな。
ゆっくりしていってね、とおばあちゃんは微笑みながら言うと、そっと部屋を出ていった。
「で、何の用事?」
にこっと広角を上げて早羽さんが首を傾げる。
僕がえーとえーとと何と言っていいのか考えていると
「早羽さんが援助交際をしたという噂を聞きました。本当でしょうか」
痺れを切らした宝さんが単刀直入過ぎるほど単刀直入に本題を切り出した。
「ど直球」
プッと早羽さんが吹き出す。
「ノーコメントね」
そして、そう言って姿勢を正した。
「ノーコメントって…内緒ってこと、ですか?」
「内緒っていうか…その噂が本当でも嘘でも私にとったらどうでもいいことなの。ところで、私が援交したって、乙が言ったの?」
「あ、ち、違います!」
「オッさんはダンマリです。キミさんも小鞠さんも…。この情報は寿絵瑠達が勝手に調べて得た情報です」
「そう…それを知ってどうするの?興味本意?」
早羽さんは言葉の割に、怒っているようでは無かった。
こんなに失礼な奴らをむしろ、興味津々な目で見ている。
「いえ。あの…僕たち、早羽さんに戻ってきて欲しくて…」
「あれ以来、生徒会はバラバラなんです。だから、我々で生徒会を元に戻したいんです。本来いるはずの貴方がいないと、元に戻れません」
短い言葉だけれど、これが僕らの全ての気持ちだ。
生徒会を建て直したい。元通りにしたい。元に戻った生徒会には早羽さんが必要だ。
だけど…。
僕らの言葉を聞いて早羽さんは悲しそうに笑った。
そして
「無理よ」
と、ぽつりと呟いた。
キュッと心臓が捕まれる感じがした。