生徒会へようこそ【MISSION'5'生徒会を再建せよ!】-22
●乙&早羽●
「…何よ」
「あ?」
「何よそれ、泣いてるの?」
「あ?ああああ!?」
暫しの静寂のあと、急に我に返った乙が部屋中を駆け巡る。
「ああああのな、こここここれはな違う!ちちちち違っ!!」
「ふふ」
早羽が目元を拭いながら乙を笑う。
「ごめんね」
笑いながら呟いたその声は、一人で騒がしい乙には届いていない。
それでも嬉しそうに早羽は微笑む。
「あーあ、私学校辞める理由なくなっちゃった」
その言葉に乙がピタリと止まった。
「辞めなくていい」
早羽に背を向けたまま、乙が言った。
「ここに戻ってくればいい。副委員長の席は空いたままなんだよ」
その言葉が聞きたかった。ずっとずっと聞きたかった。
「…うん!」
早羽はしっかりと頷いた。
そして、ピクリとも動かなかった扉がカラカラと静かに開いた。
扉を開けた瞬間、僕はぶん殴られた。
だけど手の振りの大きさやグーであるはずなのに、そんなに痛くなかったのはオッさんが手加減してくれたんだろう。
その手加減にどんな意味があるのか分からないけど、まぁ、いい意味で受け取っておいていいのかな。
僕ら四人とスーツマン二人で校舎を出ると校門の所で、渡邊先生が煙草をふかしていた。
「よう、早羽。久し振りだな」
「…うん」
片手をあげる渡邊先生に、恥ずかしそうに手を振り返す早羽さん。
「ねぇ、せんせ。お願いがあるんだけど…」
「はぁ〜っ」
渡邊先生と早羽さんを見ていたのに、後ろの方で盛大なため息が聞こえた。
振り返ると、オッさんが宝さんの前で項垂れていた。
「おい宝ぁ。JEWELЯY TAKAЯAの黒い部分、怖すぎだろ…くそぉ」
「…え、JEWELЯY TAKAЯA?なんのことですか?」
白々しいよ、宝さん!
そういえば宝さん、社長の娘だって隠してるんだっけ。これで隠し通せてると思っているから不思議だ。