生徒会へようこそ【MISSION'5'生徒会を再建せよ!】-13
「噂が気になった」
小鞠さんもキミさんもそう言っていた。
二人が室内に入ると既にぶちギレたオッさんがいて、「もーほんと超ヤバイ」状態だったらしい。
三人で気まずい雰囲気の中無言でいると、全く似合わない明るい声で「おはよ」と言いながら早羽さんがガラガラと入ってきた。
「ねぇ、みんな聞いた?私のこと」
開口一番、早羽さんが笑いながらそう言うと
「おう、聞いたわ。胸糞悪ぃ」
と、今まで聞いたことのないような冷たく鋭い声でオッさんが呟いた。
「みんな知ってるからここにいんだろ」
オッさんは止まらない。下を向いたまま、怒りを堪えるような震えた声だったらしい。
あまりの迫力にキミさんも小鞠さんも、早羽さんまで微動だに出来ず、そんなオッさんを見ているだけだった。
「テメェみてぇな奴、仲間じゃねぇ」
そうかすれた声で吐き捨てると、オッさんは勢いよく扉を開けて部屋を出て行った。
ひきつった早羽さんの顔が、言葉を噛み締めるたび徐々に悲しみにかわって行く様がありありと見てとれた。
「小鞠も公彦もそうなの?」
小さな声で呟く早羽さん。
「え、いや…」
目の前で起きた出来事に付いていくのが精一杯で、二人とも曖昧な返事しか出来なかった。
「そう…なんだ」
目を伏せてそれだけ静かに言うと、開けっ放しにされた扉から早羽さんは出ていってしまった。
二人が渡邉先生に真実を聞いたのはその日の午後だ。登校してきていない早羽さんを知って、二人に話をしに来たそうだ。
「教師ってなーんの役にも立たねぇな。ほんと嫌んなるわ」
話をし終わるとそう言って、渡邉先生は職員室に戻っていった。
その後、サボって帰ろうとしていたオッさんを二人は引き止め、第4多目的室に連れてきて、渡邉先生の話を丸々話して聞かせたそうだ。
オッさんは大人しく聞いていたけど話が終わると、すぐに
「そんなんどーでもいいんだよ」
そう言って、二人を睨み付けて帰ってしまった。
次の日には元に戻ってたけど、この話は禁句になってしまったそうだ。
オッさんがダメなら早羽さんに、って思ったのにメールも電話も繋がらずお手上げ。会いにいっても門前払いされ、それっきり音信普通だったらしい。