契りタイム-1
1月。朝から厳しい寒さだった。
どてらを羽織って背中を丸めたミカは、カレンダーの前に立って、今日の所に「36.88」と書き込んだ。
「よしっ。解禁っ!」ミカは一人、力強く言って、拳を握りしめた。
兵藤ミカ。大学4年生。卒業論文の提出も終わり、この3月に卒業するのを待つばかり。大学近くの大きなスポーツショップへの就職も、すでに決まっている。
彼女は、中学から続けている水泳の技術を極めようと、名門のこの大学で学び、当然水泳サークルにも所属していた。
ミカはケータイを手に取った。
「おい!」
『な、なんすか?いきなり威圧的だな。』電話の向こうでサークルの後輩、久宝が反抗的に言った。
「招集かけろ。」
『は?』
「今日の夜の7時。小泉、堅城、美紀、それに海棠。場所は居酒屋『久宝』。」
『きょ、今日っすか?』
「今日だ。」
『えっと・・、いつものメンバーっすね?って、俺もその中に入ってるんすか?』
「入れてやるよ。だけど、おまえは半分店員だろ?働け。」
『働け・・・って・・・。それにミカ先輩、海棠は先輩の彼氏でしょ?先輩から連絡してくださいよ。』
「サプライズだ。」
『いや、意味わかんないから・・・。』
「一応おまえからも言っとけ。あたしがあいつにいきなりこんなこと言ったら逃げられるかもしれないだろ?」
『いや、もっと意味わかんないから・・・。』