契りタイム-2
居酒屋『久宝』。小上がりの座卓に向かい合って三人ずつ。全部で六人が集まっていた。
ミカを真ん中にしてその右にケンジ、左に美紀。向かい合って真ん中が久宝、ケンジの前に堅城、美紀の前には小泉が座って、紙ナプキンで眼鏡を拭いていた。
「ビールでいいっすか?皆さん。」
はいっ!と手を挙げたのは堅城、小泉、美紀、そして久宝本人の四人。
久宝は数えかけた手を止めて、怪訝な顔をした。
「もう一回訊くけど、生ビールのお客様。」
手を挙げたのは、やっぱり四人。
「ミカ先輩はビールじゃなきゃ何なんすか?老酒っすか?ウォッカのストレートっすか?」
「ウーロン茶。」
「ええーっ?!」
小泉は持っていた眼鏡を吹っ飛ばし、堅城は仰向けにひっくり返り、店の床に落ちて、勢いで後転をした。
それ以外のメンバーも、一斉に立ち上がり、おろおろとうろたえた。
「な、なんだ、なんだ、何がどうしたんだ?」
「こ、こんなことが・・・」
「そこに座ってるのって、本当はミカ先輩じゃないんじゃねえの?」
ミカが目を上げて言った。「何だよ、あたしがウーロン茶飲んじゃいけないのか?」
「な、何があったんすか?」久宝が恐る恐る訊いた。
「ミカ先輩が居酒屋に居ながら飲まないって・・・・、何かとんでもないことが?」堅城が後頭部にできたこぶをさすりながら言った。
「この後、何かがあるんだよ。」
「こ、この後?」
「いいから座れよ、みんな。」