カノジョの定義-4
「あの、それってどういう意味……」
「ん? 言葉通りのつもりだけど、意味わかんなかった?」
「…………」
何だろう、急にくるみさんから禍々しい空気が漂ってきたような気がする。
口元をニッとあげて微笑むくるみさんは、変わらず綺麗なはずなのに、なぜかゾクッと背筋が凍った。
「陽介ってさ、甘いもの嫌いだし、女の子が好きそうなお店って全く興味ないのよね」
「え?」
「ああ、知らなかったんだ。それほど陽介は上手に恵ちゃんに合わせてたのね」
「…………」
陽介は確かに甘いものはあまり食べない。あたしが行きたいって言って、陽介がハイハイとついてきてくれるパターンばかりだったことを思い出す。
女の子が好きそうなお店についても然り。
服を買いたい、雑貨屋に行きたいってあたしが言えば、陽介は文句一つ言わずについて来てくれていたから、あたしに合わせてるなんて考えても見なかった。
「ちなみに映画は家で観る派なのよ、陽介は。人混みが嫌いなのよね。ああ見えて意外とインドアなの」
拳を口にあててクスクス笑うくるみさん。
あたしはカッと顔が熱くなって思わず俯いてしまった。
あたしと陽介のデートは大抵外に出歩くのが常。あたしは用がなくても街をブラブラするのが好きだし、陽介と手を繋いで歩くのが大好きだ。
でも、思い起こせば陽介って確かに人混みが嫌いなのかも。
たまには家でのんびりしようと陽介が提案することが度々あったっけ。
それをいつも流して、無理矢理外に連れ出して。
呆れながら笑う陽介と、はしゃぐあたし。なんだかそれが色褪せていくような気がした。
もしかしてあたし、陽介に無理させてた……?
今までの付き合い方を全て否定されたような気がしてきて、気付けばあたしは手のひらにジットリ汗をかいていた。