カノジョの定義-3
「う、うん……。たまに……かな」
「そっかあ。じゃあデートって言ったら、こういうとこや可愛い感じのお店で食事したり、映画観たりとかしてるのね?」
「そうだね……、あとはカラオケ行ったり、あたしの服買いについてきてもらったり、とかが多いかな」
あたし達はそんな会話をしながらガトーショコラをつつき始めた。
確かに絶品と言われるほどの味。甘過ぎず、くどくなく。
生地に練り込まれた胡桃の食感がイイ感じでしっとり歯触りもいい。
なのに、上手に飲み込めない。
ケーキは大好物だし、格段に美味しいはずのこれ。
陽介と一緒だったらあっという間に平らげて、「お前ってホント甘いもん好きな」なんて、彼に呆れられたりしながらも笑い合えるのに。
なんでかな、この娘相手だとまるで刑事ドラマなんかでよく見るような、取り調べの時に出されるカツ丼を味気なく頬張っているような気持ちにさせられる。
いや、実際取り調べに近いような感覚だから、美味しく食べることが出来ないんだ。
くるみさんはあたしと陽介がどんな風に付き合っているのかを知りたがっている。
友達の輝美にも、陽介との交際を根掘り葉掘り訊かれるのはしょっちゅうだけど、その時みたいに楽しく話せないのはおそらく……。
「へえ、うまくいってるのね」
一通りくるみさんの一問一答を終えた頃には、なんとかケーキも綺麗に食べ終えることができた。
「ま、まあ……うまくいってる、と思うよ」
くるみさんにそう言われると、なんだか自信がなくなってくる。
いつも隣で笑ってくれる陽介の顔を思い浮かべて、なんとか自分を保とうとしても絶えず襲ってくる不安。
そんなあたしの心の内を見透かしたように、くるみさんはなぜかクスクス笑い出した。
「陽介も頑張って恵ちゃんに合わせてるのね」
「え……?」
ゆっくり顔を上げると、くるみさんは再び頬杖をついてあたしに意味深な笑みを見せた。