アンバランスな愛-18
「は……はぁ……はぁ……」
「……ふにぁ〜……」
カリーは無意識にゼインを抱き締め、ゼインはそれにうっとり甘えた後、ふと我に返る。
「……うわっ悪ぃっ!理性ぶっ飛んだ!!」
セクシーな下着を身に付けたカリーに我慢出来ずに、かなり乱暴に抱いてしまったとゼインは慌てて身体を起こし、その拍子にカリーからゼインが抜けた。
ずりゅん
「ひやんっ」
ごりごりと中を抉られ、カリーは再び痙攣する。
「ああっごめんっ」
何をやってもカリーを追い詰めてしまい、ゼインは謝りながら優しく身体を擦ってやった。
「ふにゃ……それ気持ち良い〜」
カリーは猫のようにゼインの手に擦り寄り、幸せそうに微笑む。
「……ごめん……暴走した……」
「ふふ……私の魅力にノックアウトぉ?」
「あう……」
ゼインはボッと顔を赤くして項垂れた。
「ね?スランが色っぽい下着履いてたら暴走するぅ?」
「ぶっ」
とんでもない事を聞かれたゼインはうっかり想像してしまい、盛大に吹き出す。
「無い、それは無い」
ゲラゲラ笑うゼインにカリーは満足そうな顔をした。
「ふふん、あの馬鹿男に勝ったぁ♪」
「だぁら、スランの事は……まぁ……いいか……」
あの男が心に潜り込んだのは事実だ。
それはカリーも同じなのだろう。
だからこんなにも気にするのだ。
影のように忍び寄って、2人の間にひっそりと居座った。
あの男は根っからの暗殺者……気づいた時には手遅れ……2人の心はしっかりとスランの手の内だ。
それでもやっぱりカリーが好きで、ゼインが好きで……この不可解な感情の答えは一生見つからないな、と2人は結論づけ、再び絡み合って愛を確かめ合うのだった。
明け方近く、ゼインはベットを抜け出して城の屋上へと向かった。
そこで魔物に変身すると大きく身体を伸ばす。
目の前に広がるのは薄紫色に煙る朝靄……ゼインは思いっきり跳躍して城の中庭に降りると、火山へ向かう。
酷く苦労して登った山だったが、魔物の身体ならあっという間に頂上だ。
火口ギリギリで止まったゼインは、口の中に入れていた小瓶を取り出した。
中にある小さな小さな種は……もう芽吹く力は無いそうだ。
(……忘れねぇよ……)
悪い意味じゃなく……ただ、確かに存在していた証として憶えておく。
ゼインは小瓶を火口の中へ落とした。
小瓶は赤々と煮えたぎる溶岩に触れる直前に破裂し、キラキラと炎を上げて……消えた。
暫くそれを見ていたゼインは、昇ってきた朝陽に目を向ける。
巡り巡る世界……昨日とは違う今日、今日とは違う明日が……再び始まろうとしている。