アンバランスな愛-13
「ちゃんと話聞いてやれ」
そう言い残して部屋を出ていくスランに、ゼインは感謝の言葉をかける。
「……ありがとう……」
小さい声だったがしっかりとスランの耳に届いた。
助けに来てくれて、慰めてくれて、カリーと会わせてくれて、チャンスをくれて。
全てのありがとうを込めたゼインの言葉に、スランはヒラヒラと後ろ手を振ってドアを閉めた。
そのドアに背中を預けたスランは、片手で口を塞いでふうっと息を吐く。
(……男に走るわけねぇ筈なのにな……)
もし、カリーが落ちてこなかったらあのまま最後までヤッてたかもしれない……そう思ってしまう程、ゼインが可愛かった。
と、同時にカリーも可愛いと思う。
怒って拗ねて避けて……結果的にタイミングを逃して出るに出れなくなってるのなんか、かなり萌えだ。
(……同時に2人の人間に惚れるとはねぇ……)
しかも、2人ペアで好きなのだ。
お互いを想う気持ちがイジらしくて愛おしい……単品じゃ魅力を感じないのが不思議だ。
どうやら自分の恋愛感情は相当壊れているらしい、とスランはにやけて廊下を歩き出す。
その後数年間、ゼインとカリーがスランに会う事はなかった。
「………………」
その頃、ゼインとカリーはというと重苦しい空気の中で沈黙していた。
やっと会えた嬉しさと、泣いた場面を見られたであろう恥ずかしさでゼインはカリーに抱きついたまま動けない。
ただ、カリーの背中にはゼインの心臓が煩いぐらい鳴っているのが伝わっていた。
「お……怒ってるんだから」
沈黙を破ったのはカリーだった。
「うん……ごめん」
「置いてくなんて」
「……うん……」
「ゼインが死んだら……意味ないんだから……」
「……うん……ごめん」
ゼインはひたすら謝り、カリーに回した腕にきゅっと力を入れる。
「……生きてて……良かった……」
「うん」
「また、ゼインに会えた」
「うん……また、カリーに会えた」
カリーはゼインの腕にそっと手を重ねた。
ゼインはカリーの肩に顎を置いて、フワフワの黒髪に頬擦りする。