アンバランスな愛-11
「あぁ〜…まず」
「お前な……高い酒に何て事言うんだ」
一応、お前の快気祝いのつもりで買ってきたのに返しやがれ、とスランは顔をしかめ、ゼインの手から瓶を奪い取った。
「どこ行ってたんだ?」
「まあ、色々と……城ってのはどうも落ち着かなくてな」
スランは酒を煽り、さらっとはぐらかす。
そんなスランをじっと見るゼインの視線に気づき、スランは鼻で笑った。
「なんだぁ?寂しかったのかぁ?」
ふざけてゼインの頭をぐりぐりすると、ゼインの耳がへにゃんと垂れる。
「はい?」
「……カリーが……会ってくんねぇ……」
ぐすっと鼻を啜る音までして、スランはにわかに慌てた。
「なっ?!……ばっ……泣くなっ!!」
女の事で泣くなんてカッコ悪いだの、男は涙を見せるもんじゃ無い、などと諭すスラン。
ゼインは膝を抱えてそこに顔を埋め、頷いてはいるがぐずぐずと泣き続ける。
「う〜〜〜…ああっ!もう!分かった!泣けっ!思う存分泣きやがれっ!!」
焦れたスランは両手でガバッとゼインの頭を抱いて、ぎゅうっと自分の胸に押し付けた。
一瞬、固まったゼインだったが直ぐにスランの腕にすがりつく。
「ったく……」
傷つけた事を謝りたいのに謝らせてくれない……何より、せっかく生きて戻れたのに会えないのが何より辛い。
近くに居るのに……手が届かない。
ゼインはぐすぐす泣いて、スランは黙ってゼインの頭と背中を擦り続けた。
「……ごめ……悪ぃ……」
暫く泣いていたゼインはすんっと鼻を啜って、スランの胸を軽く押す。
うっかり甘えてしまったが、かなり恥ずかしい。
スランはチラッと背後に視線をやり、ゼインに気づかれないように鼻で笑った。
「ほれ、こっち向け……ああ……もう、ぐちゃぐちゃだな」
スランはゼインの顔をクイッと上向かせると、シャツの袖口で顔を拭いてやる。
「ス……っ?!」
スランの行動に戸惑ったのはゼインだ。
これじゃまるで恋人同士のやり取りみたいだ。
無様に泣いた恥ずかしさも相まって、ゼインの顔がじわぁっと赤くなる。
「お前、可愛い顔してるよな……泣き顔なんか特に最高」
「なっ?!」
顔を挟んだ手に力がこもり、指が艶かしく頬を撫でる。
「なあ……シラフでもヤッてみたいっつったら、受け挿れてくれるか?」
端正な顔と黒い目がゼインを捕らえた。
ゼインは答える事が出来ずに硬直してスランを見返している。
スランは答えを待たずにゼインと唇を重ねた。