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杉山梢の独り言
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松野緑の変身-1

中学校もその調子で彼女は振舞って来ました。

でも私はなるべく彼女と距離を置いて見守ることに徹しました。

彼女と私ではタイプが違うので、あまり深く入り込まないようにしたのです。

彼女は彼女なりに友達もできていたようですし、私には私なりの友達関係があったのです。

そして特に私は男の兄弟の中で育ったこともあって、男の子たちと平気で口を利いていました。

その点松野さんと私では同じ人間関係を作るわけにはいかなかったと思います。

松野さんがいくら少年のような格好をして、喋り方もそう装っても、対男生徒になったときは、自然に口を利くことがかなり難しそうでした。

そんなとき彼女は私の真似をして学んでいったようです。

けれども彼女には悩みがありました。

休日になると女の子に戻る彼女は二重生活をしていたのです。

私は時々は招きに応じて彼女と休日を一緒に過ごしました。

というのはいくら友達ができても、お嬢さんとしての自分の姿を私以外の者に見せていなかったからです。

そのときに感じていたのですが、松野さんは自分の中の女の子を表に出したがっていたということです。

それが高校進学を機に一気に現れました。

その前に私は中学3年の秋に祖母さまを亡くしました。

このことは私にとって大きな喪失感となりました。

死とは何か? 別れとは何か? 私は何度も考えました。

祖母さまは、最期のときが近づいたと自覚していたらしく、私を枕元に呼んで言いました。

「私はお前に全て必要なことを教えました。 

お父さんも、お母さんも正直これからお前の力になってくれるとは考えにくい。

だからお前は強く生きてほしい。自分を見失わないように自分の力で自分を助けなさい」

私はその言葉を胸の奥にしっかりと刻み込みました。

自分を助けるのは自分だと。それ以来それが私の座右の銘になっているようです。

さて高校進学のときの松野さんの変身の話題に戻します。

中学の終わりころから少しずつ髪を伸ばして行った彼女は高校デビューを果たしたのです。

そこは私服自由の学園でした。彼女は最初から女子力を全開して登場しました。

ずっと抑え込んでいたものが一気に花開いたという感じです。

その間私は彼女と距離を取りました。

彼女はたちまちミス学園の称号を得て、男生徒たちの人気者になりました。

けれどいくら何人もの男生徒から申し込まれても、その誰とも付き合おうとはしませんでした。

実際に男の子にどうやって接したら良いかわからなかったのです。

男の子を惹きつけることはできても、その後一歩進むことに躊躇いがあったようでした。

高校に入ってからは私は殆ど彼女と接点を持つことはなかったので、私は私で部活動のバドミントンに熱中していました。

 


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