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ナクシモノ〜シスター&ブラザーコンプレックス〜
【学園物 恋愛小説】

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第五話-6

「自分で書いたことに自信が持てないと言うなら、これはどうですか!?」
瑞希はパラパラとページをめくり、何枚かの写真が貼られているところで止めた。
「例えばこれです」
「懐かしいな」
瑞希が指し示したのは、全校生徒で近くの公園に遠足へ行った時の写真だった。手前にいるのは俺で、下級生らしき女の子と肩を組んでいる。
「この子、兄さんの幼馴染みの小倉紅葉ちゃんですよ!」
「何度も言うがな、瑞希。俺に幼馴染みはいないよ。いたら忘れるもんか」
幼馴染みのことを忘れるとか、最低じゃないか。
「兄さんはバカですか?」
「なんだよいきなり……瑞希にそんなこと言われたら生きていけないだろ」
「ご、ごめんなさい兄さん……。でもあの、楓さんの時に言っていた超能力のことも忘れてしまいましたか?」
超能力――『愛情』に反応して視力、ヘソ、髪の毛、果ては性欲までも奪う恐ろしい……かはともかく、とんでもない力だ。
「忘れるわけないだろ」
「兄さんは紅葉ちゃんのことを忘れています」
「いや、だからな。忘れるも何も俺は紅葉ちゃんと……」
瑞希の真剣な眼差しに射抜かれ、俺は思わず言葉を止めた。
アルバムに写っている少女。幼馴染みだという紅葉ちゃん。そして超能力。
「……瑞希の言いたいことはわかった」
「あ……わかってくれましたか」
「ああ」
俺が超能力によって記憶の一部――紅葉ちゃんのこと――を忘れた可能性がある。瑞希はそう言いたいのだ。
「なあ瑞希。愛情で『誰かに関する記憶』が消されるのって、どんな時だ?」
「そうですね……」
瑞希も過去に不可抗力とはいえ『愛情』があるがために一条さんの髪を奪ってしまったことがある。もしかしたら何かわかるかもしれない。
「やっぱり、『あんな人のことなんて忘れて、私だけを見て』って思った時じゃないですか?」
「なるほど……」
「兄さん。私、その人に心当たりがあります」


   ***


「ここか……」
俺はその日の夜、瑞希に言われてある人物の家へ訪れた。一人で暮らすには丁度よさそうで、安そうなアパートの一室。
インターホンを押してみたが、反応はない。


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