第五話-5
「瑞希こそ何言ってるんだ?」
俺が紅葉ちゃんと幼馴染みだって?おいおい勘弁してくれ。そんな存在がいたら忘れるわけがないだろう。
「姉さん……まさかこれは」
「だろうなー。まったく誰だ。厄介なお願いをしたのは」
姉ちゃんは突然瑞希のスカートをめくり、
「今日は白か」
そう呟いて出ていった。
「……見ました?」
「バッチリ見たぜ」
「信じられません……普通目をつむるなり、そらすなりするでしょう……」
「俺は瑞希の兄だ。だから瑞希の下着を見る権利がある」
「な!い!で!す!」
***
その日の夕方。
自室で休んでいると、部屋の扉がノックされた。
「兄さん。ちょっといいですか?」
「ああ」
扉を開け、本のような物を抱えた瑞希が入ってくる。
「兄さんに見てほしいものがあるんです」
「なんだ?」
瑞希は持っていた本、もとい俺の小学校の卒業アルバムを床に広げた。
「なんで瑞希が持ってるんだよ」
去年久しぶりにアルバムを見たくなって部屋を探したが、結局見つからなかったんだよな。
「に、兄さんがなくすといけないので、私が預かってあげてたんです」
「つまり勝手に持ち出したと。別にいいんだけどさ、お前結構俺がいない間に部屋に入ってるだろ」
「そ、そんなことはないですよっ」
「じゃあ姉ちゃんかな?たまぁにタンスの中が荒らされてたりするんだよな」
「し、知らない!知らないです!私じゃないです!」
何故か焦った様子の瑞希。怪しすぎる。
「で、アルバムがどうしたって?」
「これを見てください」
瑞希が指し示したのは『将来の夢』と書かれたページだった。
そこにはもちろん俺の将来の夢も書いてあり、こうある。
もみじちゃんとふたりで、プロの探貞になる。
「うわ、『探偵』の字間違ってるよ」
「今問題なのはそこじゃないです!」
瑞希はそう言い、『もみじちゃん』を指差した。
「もみじちゃん……?」
誰だそれは。そんな名前の友達いなかったはずだけど。
「そうです紅葉ちゃんですよ!今日も部室で会ったはずですよ!」
「部室で?」
もみじ……部室?まさか利乃の友達のことじゃあるまいな。
「あの子は違うだろ?」
「あの子じゃわからん、相談しましょ、そうしましょ……ってそうじゃなくてですね!」
何一人でノリツッコミしてんだこいつ。