異変T-1
キュリオとカイに挟まれ、その間で大人しく絵本をみていたアオイの体が大きく揺れた。
トサッ
「・・・アオイ?」
アオイの傾く体を受け止められず、キュリオの手は宙をつかんだ。アオイの小さな体は絵本の上に倒れ、彼女の長い髪が柔らかくひろがった。
「キュリオ様っ!!アオイ様の様子が・・・!!」
アオイを抱き起したカイの腕の中でグッタリしている彼女の姿がある。
「・・・アオイ!?」
キュリオは奪うようにカイの腕からアオイを抱き寄せる。力なく目を閉じるアオイの呼吸が弱いことに気が付いた。焦ったキュリオはアオイの胸に耳をあてると、呼吸だけではなく心臓の音も小さくなっていくのを感じ大声を張り上げた。
「・・・アオイっ!!
カイ!!すぐにガーラントを呼べ!!私の部屋にだっ!!!」
ガーラントとは、アレスが師として仰ぐ大魔導師の称号をもつ彼の事だ。
癒しの光を手のひらに集めてアオイを包みながら寝室へと急ぐキュリオ。荒々しく扉をあけると、自分のベッドへ彼女を寝かせた。
原因がわからず、ただ弱っていく娘を必死でつなぎとめようと力強く手を握る。
「・・・アオイ、アオイ・・・ッ!!!」
キュリオの悲痛な叫び声が響く中、カイが呼びに行った大魔導師が血相を変えてキュリオの部屋へと駆けこんできた。
「・・・キュリオ様!!アオイ様のご様子は・・・!!」
乱れた身なりも構わずキュリオの傍へと膝をつき、ぐったりとしたアオイの額へと手をかざすガーラント。キュリオの癒しの光を受けれいるにも関わらず、いっこうに目を覚まさない小さな姫君に眉間の皺はより一層深まった。
「一体アオイの身に何が・・・私がついていながらこんなことになるなんて・・・・」
アオイの手を握りしめるキュリオの手が小刻みに震えている。キュリオはアオイを失うかもしれないという恐怖を前に己を見失いつつあった。
「・・・・キュリオ様のお力がまるで効いていない・・・」
ガーラントがアオイの診断を開始するが、これといって悪いところが見当たらない。外傷もなければ、病にかかっているわけでもない。体は至って健康そのものなのだ。