第四話-7
「あ、あのー……」
そうこうしていると、マルが廊下から中を覗きこんでいた。
「おぉ、マル。入ってくれ」
俺がそう言うと、マルはおずおずと部室に入ってきた。
「兄さん!まだ話は終わってないですよ!」
「話なら家で聞いてやっから」
瑞希に回れ右をさせ――ついでに何気なくSDカードを奪い返し――、廊下へ追っ払った。
「兄さんのシスコン!」
そう叫んで走り去っていく瑞希。
「神代先輩はシスコンなのか?」
廊下の外、部室の前にいた女子生徒にそんなことを訊かれた。
「シスコンじゃない……ってか誰?」
「誰とは酷いですね。先輩が私を呼んだのでは?」
そう言われ、俺はマルのほうを振り返った。
「そいつっす。自分の幼なじみ」
「本校1年、石動桜(いするぎ・さくら)です」
「俺は神代智也。まぁとりあえず入って」
***
「それで、私に何か用ですか?的張りしなくちゃいけないんですけど」
的張り?なんのこっちゃ。
廊下側のソファに桜さんとマル、その対面に俺と姉ちゃんが座っている。姉ちゃんはいつまでいるつもりなんだ?
「実はな……マルがお前に、言いたいことがあるそうなんだ」
「えぇ!?自分っすか!?」
「マルが私に……?言いたいことがあるなら、電話ですればいいだろう」
桜さん、なんとなく琴梨先輩に似ているな。口調のせいか?
「直接伝えたいそうだ」
「ちょっ、先輩!勝手に話進めないでくださいっすよ!」
「なー。よくわからんが、イスワリはそいつのことが好きなのか?」
よくわからないなら黙っててほしい。
「イ・ス・ル・ギ・です」
「名前なんて気にするなよ。好きなんだろー?」
頼むから姉ちゃんは黙っててくれよ。
「べ、別に今さら、好きとか、そういうのは、その……」
「トモ。こいつツンデレさんだぞー」
どうやらそうっぽい。姉ちゃんの横やりのおかげ(?)で、そのことがわかった。つまり桜さんは、マルのことが好き……なのだろう。断定はできないが。
「桜さん。これはマジメな話なんだが」
「はい?」
「マルは、超能力によって性欲を奪われたらしい」