第四話-5
「ならマル。その幼なじみに告白しろ」
「え、別に自分はそいつのこと……」
「いいんだよ別に。ちなみにその幼なじみって、学園の子か?」
「は、はぁ。そうっすけど」
これでマルがその子と肉体的な関係になれば解決だ。
「…………」
性欲がないのに、そういう関係になれるものなのか?
性欲がないってことは、例えば相手がいくら誘惑してきても欲情できないってことだよな。
つまりマルの性欲を取り戻すには、その子に事情を話す必要があるわけだ。
「マル。その子、呼べるか?」
「いいっすけど、告白しなくちゃダメなんすかね……」
「性欲を取り戻すためだ」
多少、というかかなり強引な方法ではあるけど、俺は他に『性欲』を取り戻す方法が思い浮かばない。
「じゃあ呼んでくるっす……」
マルは渋々といった感じで幼なじみを呼びに退室した。
電話かメールで呼べばいいのに……ってそうだった。一応校則で携帯電話は持ってきちゃダメってなってるんだよな。
「おーっす!」
しばらくすると、勢いよく扉を開けてヘソを出した女子生徒が入ってきた。というか姉ちゃんだった。
「何の用?」
「ぶー。冷たいぞー、トモー。せっかくお前の愛しのお姉さまが遊びにきてやったのにさー」
「遊ぶ所じゃない。それよりいいのか?受験生だろ」
姉ちゃんは腰に手をおき胸を張る。
「ふふん。実は昨日、某有名大学への推薦入学が確定したのだ。すごいだろー?」
「……もしかして、それを自慢するためだけに来たのか?」
「ちがーう。自慢じゃないが、私はシスコンでありブラコンだからな。可愛いお前の顔を見にきたんだ」
うわ、自分でブラコンとか言っちゃってるよ。
「そーうだっ」
姉ちゃんは寄り添うように俺の隣に座り、携帯電話を取り出した。
「さっき瑞希に私の秘蔵コレクションが消されちゃったんだよー」
俺の『瑞希』フォルダに入っていたのと同じプレミアムな写真の数々か。
「送信してくれってんだろ。わかってる」
俺はSDカードのデータを確認しようとした。
「…………」
そして唖然としてしまう。
さっきまで確かに挿入されていたはずのSDカードが、いつの間にかなくなっていたのだ。
「すまん。俺も瑞希にやられた」