第三話-8
そんなもんなのか。まぁたしかに、女の子は髪があったほうが綺麗に見えるけどさ。
「だとしたら、家族か友達……一条には、親友って呼べるようなやつはいるんだろうか」
「いる……」
俺の独り言のような問いに、紅葉が答える。
「記事に、何度も名前が出てる……」
学園公式の新聞部のサイトに何を書いてるんだ……。
そういや、神様についても個人的な事情だったな。
「名前は……神代瑞希(かみしろ・みずき)。って瑞希かよ!?」
瑞希は俺の妹で、北斗学園の付属3年生である。
ちなみに俺は三人兄弟で、もうひとりは同じく北斗学園の本校3年生である夏実(なつみ)という名の姉。家ではいつもヘソ丸出しにしてるんだが、生徒たち(主に男子)から『ヘソ出しクイーン』と呼ばれていることを考えると、学園でもヘソ丸出しにしてるのかもしれない。
「いやしかし、まさか瑞希が一条の親友だったとはな」
本校生と付属生じゃ、あまり接点はないように思えるが……って、俺と紅葉も似たようなものか。
「瑞希には俺から聞いておく」
それ以前に、紅葉は論外として入りたての雲木に任せるわけにはいかないので、俺しか聞くやついないんだけど。
***
その日の夜。自宅にて。
「瑞希。一条と親友なんだって?」
瑞希の部屋に入るなり、そう切り出した。
「兄さん、勝手に入ってこないでください」
問いには答えず、文句を言う瑞希。
「なんだよ。兄妹なんだし、別にいいだろ」
「はぁ……」
少し前までは一緒にお風呂入るほどだったのに、最近ちょっと冷たくて寂しい。
「まったく……一条って、楓さん?えぇまぁ、たしかにそうですけど……それがどうかしましたか?」
「髪のこととか、何か聞いた?」
「髪……?もしかして兄さん、楓さんに何か頼まれたんですか?」
そう思うってことは、髪が消えた件は知ってるみたいだな。
「お前、一条に対して『愛情』はあるか?」
「えーと、兄さん?何を言っているんですか?」
「実はな……」
俺は瑞希に超能力のことを話した。
「にわかには信じ難いですね……」
顎に手を添え、思案する瑞希。
「でもたしかに、思いあたる節はあります」
瑞希は真っ直ぐ俺の目を見つめ、こう言った。
「楓さんの髪を消したのは、もしかしたら私かもしれません」