第三話-6
「それで先輩。一条先輩から、何か頼みごとをされませんでした?」
「え、ああ……よく知ってるな」
俺は雲木の正面に座る。
「どうしてそっちに座るんですか〜?そっちは来客用じゃないんですか?」
「いちいち細かいのな」
別に雲木の隣に座るのが恥ずかしかったとか、そんな理由じゃないからな!
俺は雲木に指摘され、彼女の隣に座った。
「じーっ」
擬音を口にし、横から見つめてくる雲木。
「先輩って、彼女とかいるんですか?」
「な、なんだよ突然……」
「いないならボクと付き合いませんか?先輩とキスしてみたいです」
それは告白か?告白なのか?
「……お前さ。そういうのって、雰囲気が大事なんじゃねーの?」
「ソウナンデスカー」
カタコトで受け流す雲木。
「あー、ごほん。無駄話はこれぐらいにしてだな」
「無駄ってなんですか!?ボクの気持ちは無視ですか!?」
「うるせー初めて告白されたのに雰囲気なくて嬉しくねーんだよ」
「酷い!?」
雲木はどさっと倒れ、うーうー唸りながらふて腐れてしまった。
「……それで、依頼は……?」
今まで黙っていた紅葉が、なぜか少し嬉しそうな声音で訊いてくる。
「ああ。消えた髪を取り戻してほしいんだとさ」
「消えた……?」
「そ。琴梨さんや日向さんの時と同じだ」
神様とやらの超能力によって、消されたのだろう。
恐らくこれまでと同じように、誰かがそれを望んだのだ。
「……あ。智也……メール……」
「どうも慣れないな、その呼ばれかた……」
紅葉の隣へ行き、PCのモニターを覗きこむ。
「また神様からのメールか……」
「神様……?」
雲木がむくりと起き上がり、俺と紅葉の間から顔を出してモニターを見つめる。
今回のナクシモノは女の子の命とも言われる髪みたいだね。
はてさて、ナクシモノのヒントを元に見事、見つけられるのかな?
「これが、神様……」
「神様ってのは、俺たちが勝手にそう呼んでるだけなんだけどな」
それにしても。神様は毎回『ナクシモノ』を強調している気がする。なぜカタカナなんだ?意味があるのか……?
「……先輩。前にボク、超能力を見たって言いましたよね」