第一話-4
「狂言?琴梨さんが嘘をついてるって?」
紅葉はこくんと頷いた。
「失明したって嘘ついて、なんのメリットがあるんだよ」
本当は目が見えているのに、見えていないフリをする。そんなめんどくさいこと、誰が好き好んでやるっていうんだ。
「それに、琴梨さんが演技してるようには見えなかったぞ」
「私にも、見えなかった……」
こいつ、一度でも琴梨さんのほうに目を向けたか?ずっとPCとにらめっこしてたような……。
「にらめっこといや、琴梨先輩って目が悪かったりするのか?」
ずっと睨まれたままだったので、もしかして視力が弱いから目を細めていただけかもーなんて思ったのだ。
「春の身体測定では、視力は1.0とある……」
「そこまで悪くないのか……近視?」
「……遠視」
あの時、俺と先輩には机三個分ぐらいの距離があった。遠視なら目を細める必要もなく、よく見える……と思うんだけど、何せ俺が近視だからなんとも言えない。単に睨まれてたって可能性もあるわけだし。
「なんにせよ、失明とは関係なさそうだな」
「……?」
紅葉がきょとんとした目でこちらを見つめてくる。
「どした」
「……琴梨先輩の視力と、在花ちゃんの失明は、まったく関係ないはず」
「?」
そりゃそうだろう。何言ってるんだ今さら。
「……けど先輩、今、関係あるような発言をした……」
「ん?ああ……医者でも原因がわからない以上、不可思議路線で考えるしかないだろ」
「それは、魔法とか、超能力的なもの……?」
「ま、そういうこった」
超能力はともかく、魔法って言い方は胡散臭いけどな。
「……なら、『神様』を当たってみるの……?」
付属2年2組の生徒、あるいはその担当の教師から送られてきたであろうメール。そこに書かれていた『神様を訪ねるといい』という文。
「『神様』って、誰のことだろうな」
「……メール送信者が崇めている人物、あるいは周りから『神様みたい』と呼ばれている人物……」
言いながらも紅葉はタイピングタッチで検索をかける。
『神様みたい』『北斗学園』
そんなんでヒットするのか?
「……出た」
「マジか!?」