セフレだった女-7
「陽介……くる……」
「セフレだったよ」
問い質す前に彼の口から出てきた、答え。
十中八九そうではないかと思っていたけれど、いざ本人から真実を聞かされると、あたしの中で何かが音をたてて崩れていくような気がした。
やば、泣きそう……。
陽介の顔が見れなくて、フイッと顔を背けると、勝手に潤み始めた瞳に柔らかい感触が落とされた。
「……やっぱな」
「え……?」
驚いてもう一度彼の顔を見ると、そこには苦笑いの陽介。
「不安になってたんだろ? くるみのこと」
「…………」
「確かにお前と付き合う前は、あいつとずっとそういう関係続けてた。あの通り、すげー綺麗だし、スタイルもいいしな。男としてはそういう女はなかなか手放したくないもんでさ」
誠実にあたしと付き合っているはずの陽介から聞かされる話が、ますますあたしを不安にさせる。
あたしよりも遥かに綺麗で垢抜けているくるみさん。
比べたくないのに比べてしまうのは当然のことで。
気付けば熱い雫があたしの目からこめかみに流れ落ちていた。
そんなあたしに、陽介は優しく前髪を梳いてフッと笑う。
「多分、くるみとはずっとどこかで繋がっていくんだろうなって思ってたよ。……でもな」
「……でも?」
「お前を好きになったら、ずっと長い付き合いだったくるみのことすらどうでもよくなっちまった」
「え?」
「こうしてお前が俺のもんになってくれて、真っ直ぐ俺を好きでいてくれるお前見てたら、本当に大切にしたいって気持ちだけでいっぱいになったんだ」
「陽介……」
少しはにかみながらそう言ってくれた陽介の顔が、霞んで見える。
それほど嬉しくて、溢れた涙は止まらなかった。
「昔俺がやってきた軽率な行動が、お前を不安にさせてしまったのは、本当に悪いと思ってる。でも、これだけは信じて? もうくるみとはしっかり切れてるし、俺、マジでお前がいてくれたらそれだけで充分なんだ」
「うん……!」
彼がここまで言ってくれるなら、あたしはそれを信じよう。
陽介はいつになく真剣な顔でそう言うと、あたしの両手首をグッと握ってから、ゆっくり唇を絡ませてきた。