セフレだった女-6
◇
「あー、疲れた」
陽介がドサリとベッドに倒れ込んだ。
すでに外は暗くなっていて、暖色のシーリングライトが優しく陽介のアパートの一室を照らしていた。
あれから結局、強引に押し切られる形で連絡先を交換したあたし。
彼女にしてみれば、連絡先の交換なんてことのないことだったかもしれないけど、あたしはずっとモヤモヤを払拭できずにいた。
考えすぎと言われたらそれまでかもしれない。
でも、くるみさんの「あたしの方が陽介をよく知ってる」と言わんばかりのあの話ぶりが無性にあたしを苛立たせた。
だから、くるみさんと別れてデートの続きを再開しても、どこか気持ちが上の空で。
時折よぎる陽介とくるみさんのセックスを勝手に想像しては不安で自分を追い込んでいた。
「メグ、来いよ」
ベッドに横になりながら肘を立てた陽介が、居心地悪そうにフローリングに座るあたしに手招きをする。
いつもなら、尻尾振った犬みたいに陽介の胸に飛び込んで行くんだけど、くるみさんの顔がよぎると足取りは重かった。
見かねた陽介は、スッと起き上がってあたしの側までやって来ると、手首を掴んでグイッと引き寄せる。
力任せに引っ張られたせいで、あたしの身体はベッドにボスッと倒れ込んだ。
そしてすぐさまあたしの身体に跨がる陽介は、いつものように深いキスを注いできた。
いつものあたしなら、このキスでスイッチが入って自分からも夢中で陽介の舌を求めるのに、今日に限っては舌が硬直したままだった。
「……メグ?」
陽介もそんなあたしに気付いたのか、ゆっくり唇を離すと真っ直ぐ瞳を見つめてくる。
「……どうした?」
不安そうな顔をする陽介に、いっそ問いただしてみようか、とも考える。
くるみさんとはどんな関係だったのか。
陽介と付き合うことになった時、彼は携帯の番号もアドレスも全て変えてあたしと向き合ってくれた。
――メグさえいればいい。
その言葉に、陽介の誠実さを感じたのは事実だけど、過去を断つことを選んだ陽介の過去を知ることはできない。
陽介の過去、知るのが怖いくせに知りたくてどうしようもなくて、あたしはゆっくり口を開いた。