セフレだった女-5
ん?
ふと胸に引っ掛かった違和感。
なんだ?
なんとなくソワソワ落ち着かなくなる身体に疑問符が浮かぶけど、答えが出てこない。
「陽介って細いくせに質より量だもんね。だから女の子の好きそうなカフェとかイタリアンとか嫌がるんだもん」
「……うるせえよ」
陽介がジト目でくるみさんを睨んでいても、彼女は素知らぬ顔で笑うだけ。
そんな二人を見て、胸のモヤモヤがどんどん広がっていく。
「そうだ、恵ちゃん。甘いものが好きなら、ケーキがすっごく美味しいカフェ知ってるよ! 今度よかったら一緒にお茶しようよ!」
くるみさんはニッコリ笑って肩に掛けていた小振りのストロー素材のバッグからスマホを取り出した。
おそらくあたしと連絡先を交換するつもりで出したスマホに、戸惑いながらくるみさんの顔を見上げる。
スラリと背が高くて、顔も小さいからモデルみたいだなあ、なんて思いながら。
「おい、くるみ……」
戸惑っているあたしを見かねた陽介は、くるみさんの行動をたしなめるようにその華奢な肩に手を置いた。
「え、いいじゃない。恵ちゃんって普通っぽくて可愛らしい感じだし、お友達になりたいんだけど? 別に陽介の連絡先を教えてって言ってるわけじゃないんだし、これくらいいいでしょ」
くるみさんの正論に、置いた手を引っ込める陽介。そしてゆっくりあたしの方を見ると、
「いいのか、メグ?」
と、申し訳なさそうに言った。
「大丈夫だって、取って食べたりなんかしないから! あ、心配してんでしょ。彼女によけいなこと喋るんじゃないかって」
「バカ、ちげえよ」
「だったらいいでしょ! あたし、恵ちゃんのこと気に入っちゃったから、陽介のことについて色々教えてあげるから! だから今度会おうよ」
くるみさんが上機嫌で話しかけてくる一方で、あたしは苦虫を噛み潰したような顔を上げることができなかった。
さっき感じた違和感に胸のモヤモヤ。この正体がやっとわかったからだ。
くるみさんが、彼女のあたしより彼女らしい振る舞いをしていたから、だったんだ。