選択-4
「あの……馬鹿チビ……!」
1人でカタをつけるつもりなのか?
3人を巻き込まないように?
冗談じゃない!あの男には個人的に貸しがあるのだ。
スランはベットから出ると荷物をガッと掴んだ。
「追う!!」
放心状態の女2人もハッとして慌てて荷物をまとめる。
(ゼインの馬鹿!!)
やっと繋がった心と絆を切り捨てたゼイン……そこまでする気持ちも分からなくはないが……カリーは目の端に浮かんだ液体をぐいっと手の甲で拭い、心の中で思いつく限りの罵詈雑言をゼインに向けて浴びせ続けた。
睡眠薬の気だるさが残る身体をなんとか動かし、とりあえず食事を取る3人。
気持ちは焦っているのだが、お腹はすくのだ。
その食堂では昨夜現れた『銀色の魔物』の話で持ちきり。
「俺ぁついに死ぬんかと覚悟したさぁ」
「身の丈10メートルはあったさね、大きな口が血に濡れててさぁ〜そりゃぁ恐ろしかったさぁ」
「うちの家畜を襲ってたから、儂はコイツでバシーッとやってやったのよ。バシーッとね」
何だか話が大きくなったりおかしくなったりしているが、まごうことなくゼインの事だ。
話によるとゼインは夜10時過ぎに行動したようだ。
その間、のうのうと寝こけてた自分に腹がたち、スランはぐいっとお茶を煽る。
食事を終えると3人はさっさと街を出てクラスタへと向かった。
馬を買うお金も無いし、クラスタへ向かう乗り合い馬車があるワケ無いしで、徒歩で行くしか無いのだが半日以上遅れをとってる上にゼインは魔物形態で行っている。
どう考えても間に合わないし、何かあったとしたらとっくに決着がついているのだが、3人の足は止まらなかった。
体力の無いポロを交代で担ぐ事にして、無言で道を進んでいると急に太陽が陰った。
(雨?)
何もこんな時に降らなくても、と舌打ちして空を見上げたカリーは、太陽を遮ったモノを目にしてギョッと固まる。
「カリオペ?」
足を止めたカリーに気づいたスランが、カリーの目線を追って……同じように固まった。
2人の視線の先……そこには雄大に翼を広げた大きなドラゴンの姿。
影になっていて細部は分からないが、これだけ大きなドラゴンなんか見た事ない。
2人は急いで木陰に隠れ、ドラゴンが去るのを待とうとするが何故かドラゴンは旋回を始めた。
「……腹すかせてるとか無いよなぁ?」
「えぇ〜?私達、不味いよぉ〜?」
「多分、丸飲みだから味は関係ないんじゃないかな?」
3人は緊張しながら緊張感の無い会話をしつつ、ドラゴンの動きを伺う。
そのドラゴンは鼻をひくつかせながら首を巡らせ、3人が隠れている場所で動きを止めた。