選択-3
(……シャワーかな?)
部屋の端っこに置いてあるゼインの荷物を確認したカリーは、頭を掻いて時計に目を向ける。
「え?」
時計の針は2本とも真上を指しており、とっくに昼を回っている事をカリーに教えていた。
「やだっ嘘っ何で起きなかったのよぅ〜」
いつもなら遅くても9時には目が覚めるのに、どれだけ疲れてたんだと自分にツッコミつつカリーは慌てて服を着る。
しかし、何かおかしい……スランやポロが起こしに来ないのも変だし、身体に残る気だるさが普通と違う。
ざわっと鳥肌がたった腕を擦ったカリーは、急いで2人が使っている隣の部屋へ走った。
「ねえっ!スラン!ポロっ!」
ドアを叩いてノックするも返事がない。
焦れたカリーは髪の中からヘアピンを取り出して、ドアの鍵を開けた。
「!!ちょっ……!?ちょっと!起きてよぅっ」
部屋に入るとスランもポロもぐっすり夢の中。
スランだっていつもはこんなじゃないし、奴隷のポロが寝過ごすなんてあり得ない。
カリーは身体に残る違和感の正体に気づいてギリッと奥歯を噛み締めた。
(薬盛られたんだ)
この倦怠感は睡眠薬を飲んだ時のだ……これがあるから薬は嫌いなのだ。
「スラン!ポロぉ!起きてってば!っていうか、何で一緒に寝てんのよ?!」
別に裸ではないがベットは2つあるのに、2人はひとつのベットで絡まるように寝ていた。
「ん〜…カリー……?……え?……!やっ!何で?!」
あまりの騒がしさにやっと目を覚ましたポロは、自分と間近にあるスランの顔を見てボンッと赤くなり、慌ててスランの腕から抜け出る。
「んぁ?ああ……おはよう」
スランもようやく覚醒して目をシパシパさせ、異様に重い頭に顔をしかめた。
「……あ?……薬盛ったのか?」
目が覚めて直ぐに気づいたスランはカリーを軽く睨む。
「私じゃないぃ〜…ってか、ゼインが居ないの!」
「はあ?」
スランは身体を起こして状況を把握しようと軽く頭を振った。
「ゼインが……居ない……?」
やっと頭がハッキリしてきたポロも、自分の身体に残る薬の影響を自覚する。
「多分……1人で行ったのよぅ」
カリーはへたんと床に座り込んで肩を落とした。
こっそりと、暗殺者2人にバレないように薬を盛って、そうまでしてゼインは3人を置いて行ったのだ。