選択-18
「ああっもうっ!やりにくいなぁっ!!アース!まだぁ?!」
のんびり屋のエンもさすがに焦れてアースを急かした。
「うっせぇ!!そんな言うならお前も手伝え!」
エンの問いかけに返ってきたのはアースの怒号。
身体を縮めたエンはアビィをアースの方向に行かせると、飛び降りた。
「アビィ頼むよ」
『キュア』
魔法攻撃は無くなるが、確かに魔法陣完成が最優先だ。
アビィにだって攻撃は出来るのだから、ここはアビィに頑張ってもらって、魔導師にしか出来ない事に集中だ。
「よろしくな、アビィ」
『キュ』
アビィの背中に飛び乗ったスランは、アビィの首筋を乱暴に撫でる。
乱暴に見えるがそこはスランの手技……アビィの目はトロンと潤んでるし、尻尾はくねくね。
(猛獣使い……)
魔物も精霊も手技ひとつで陥落させるとは……恐るべしスランバート。
カリーはクインの上でスランを見た後、ゼイン=ザルスに視線を移した。
「ねえ、何が見える?」
「はい?」
いきなり話しかけてきたカリーに、ゼイン=ザルスは攻撃を止めて怪訝な顔をする。
「ゼインが私よりアンタを選んだ理由を考えてた。私は可愛いし女だし人間よ?アンタより劣るトコなんてひとつも無い」
「否定はしませんよ?君は可愛くて女性体で人間です」
「そうよね?じゃあ、何でアンタを選んだの?」
カリーには納得いかない……どう考えてもコイツはゼインに酷い事をしているし、ゼインが嫌う事も沢山している。
命を奪う……という事については人の事は言えないが、自分がこの植物に負ける理由が分からない。
「だから、私なりの結論。ゼインはアンタに自分の見ている世界を見せたいのよ」
「ゼロの見ている世界……ですか?」
「だから聞いてるの。ゼインの目から何が見える?」
ゼイン=ザルスは改めてカリーを見る。
浅黒い肌に黒い髪、赤い眼の彼女は……凄く美味しそうに見えた。
「君は……可愛くて女性で人間で……非常に美味しそうです」
「そ、そう……」
ゼインが普段、カリーを『美味しそう』と見ているのを聞いてカリーは少し照れる。
「じゃあ、スランは?」
「……そうですね……身体を重ねた男性の中で一番下手くそ……」
「んだと?」
「……みたいですが、唯一……男性を相手にしてて嫌悪感を持たなかったのは彼だけみたいです」
途中、聞き捨てならないセリフに突っ込んだスランだったが、セリフを最後まで聞いて顔を赤らめた。