選択-11
異常な大きさで異様な雰囲気をまとった蕾を前に、一行は困惑していた。
「何だろねぇ?これ」
エンはアースに振り向いて問いかけるが、アースは少し離れた場所で完全無視。
分離の魔法陣制作と維持しか出来ない、という態度だ。
「この赤黒い触手からしてザルスだとは思うけど」
スランは足元にある触手を見て、それを少し踏む。
それに反応するようにビクンと動いた触手だったが、襲ってくる気配は無かった。
「……ゼイン……」
ジッと蕾を見据えていたカリーの口から、ポツリと声が漏れる。
「ゼイン……ゼインだ。あの中に居る」
そう言ったカリーは、いきなり走り出した。
「は?あ?!馬鹿っカリオペ!!」
制止する間もなく、カリーは蕾に飛び付いて木の根のようなものに手をかける。
「危ねえって!!」
「だって!居るもんっ!」
肩を掴んだスランの手を振り払ったカリーは、彼の腰に差してあったショートソードを引き抜いて蕾に突き刺した。
そして、そこを手がかりにして力いっぱい根を引っ張る。
バキバキと音をたてて剥がされた根の中には、球体の水晶のようなものがあり、青白い光を放っていた。
その中心……大きな水晶の真ん中に小さな人影が見える。
「!!ゼイン!!」
人影はゼイン……胎児のように丸まった姿勢で、水晶の中をゆらゆらと揺れていた。
その身体は呼吸をするように規則的に動いていて、生きているのがかろうじて分かった。
カリーは安堵のため息をつくと、水晶に両手をついて叫ぶ。
「ゼイン!ゼイン!!」
水晶をバシバシ叩きながら必死に呼びかけるカリー。
その声が届いたかどうかは分からないが、水晶の中のゼインの身体がピクリと動いた。
「ゼイ……っ」
ゆっくりと薄く開いた目が、すぅっとカリーを見る。
「!!」
その視線を受けたカリーは、金縛りにあったかのように動けなくなった。
大好きな蒼く輝くゼインの目は……全く感情の読めない乳白色に変わっていた。
ゼインは丸くなっていた身体を伸ばし、カリーから目を離さずにユラリと動く。
「ひ……ぁ……」
ガチガチと何か鳴っている音がする……それが自分の歯だと気づいた時、カリーの身体がブワッと宙に浮いた。
「!!」
瞬間、水晶の中から青白い水の触手が伸びてカリーの目の前を掠める。