死の国T-1
悠久の国を出て、アレスはどこの国にも属さない・・・暗いこの世界の中心へと来ていた。
彼が迷わず進んだのは【死の国】へと通じる巨大な門の前に立っている。
黒い霧に覆われた門をくぐると、死の神のもつ鎌をあらわした見事な彫刻が刻まれている扉の前へとたどり着いた。
傍によるだけで魂が吸い取られるような、不思議な感覚に襲われきつく拳を握りしめた。
(冥界の王・マダラ殿の治めるこの国には・・・彼が許した者しか足を踏み入れることが出来ない)
扉を軽く押してみたものの、それは固く閉ざされ・・・びくともしない。
ふぅ、とアレスが軽く息をついたとき・・・
「・・・我が国の門をくぐりし者・・・
そなたは何用があってこのような場所に来た・・・」
中から響く声にアレスは弾かれたように顔をあげた。
「冥界の王・マダラ殿に謁見を願いたい。声の主殿は、死の国のお方か?」
「・・・名はなんという」
言葉少なく、低い声の主は探る様にアレスへと問いかけてくる。
「私はアレス。悠久の王・キュリオの城に仕える導師・アレスと申します」
「・・・・悠久の・・・」
しばらくの沈黙のあと、扉の向こうにいる主の声が・・・さらに低くなり緊張感を漂わせた。
「アレス殿、招かれざる客にマダラ様はお会いにならない・・・それでもと言うのならば我が王の一撃に耐えてみせよ。それが条件だ」
「・・・マダラ王の一撃、だと・・・?」
(王の力に対抗できるのは王のみ・・・すなわち、それが意味するものは・・・・)
握った拳からは嫌な汗が流れおちた。
(冥界の王・マダラ殿が所持する神具は・・・神の鎌。その鎌は人の魂を狩ることが出来るという・・・。しかしその力は未知数で、知られていないことがまだまだたくさんある・・・)
「・・・命が惜しければ・・・お引き取りを」
(キュリオ様以外の王に謁見を願いでることが・・・これほどまでに危険なものとは)
「・・・いや、覚悟ならばそれなりに出来ている。・・・マダラ王に謁見を」
「・・・しばし待たれよ」
その言葉を残してアレスと扉を挟み会話をしていた死の国の従者の気配が遠ざかる。