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翼の記憶 -追憶編-
【ファンタジー 恋愛小説】

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導師・アレスU-1

―――――・・・



戻らぬキュリオの席が空いている。
アオイは寂しくその場を見つめたまま、出された食事を口に含んだ。






「アオイ様・・・」






そんな小さな背中を見てカイが聖獣の子を連れてアオイの傍へ駆け寄った。






「アオイ様、あとでこの子にも食事を与えてみようと思うのですが・・・ご一緒にいかがですか?」





ぱっと顔をあげたアオイは目を輝かせて頷いた。残った夕食を頬張って、勢いよく椅子から飛び降りる。






「この子、なにたべる?」






わくわくしながら聖獣の子の頭をなでるアオイはカイの手をひいてフルーツの盛られたガラスの容器を指差した。






「そうですね、何を食べるんでしょう?アレスに聞いておけばよかったかな・・・」






ふたりで首をひねっていると、背後から声がかかった。






「主に、木の実や果実を好んで食べているようだよ」






アレスが微笑みながらこちらに向かって歩いてきた。昼間にみた衣装とは違い、どこか余所いきの・・・正装をしているようだ。






「アレス・・・どこかに行くのか?
・・・もしかして、アオイ様のことで・・・?」






「ああ、ちょっとな・・・
これからキュリオ様へお目通り願いたいのだが・・・こちらにはおられぬか?」






「アレスおでかけ・・・?」






背の高いアレスを見上げるアオイは、いつもと違うアレスの様子に賢くも何かを読み取った様子だ。





「すぐ戻って参ります、アオイ様」






優しく指先でアオイの頬をなでると、安心したように頷くアオイ。






「はやくかえってきてね」






と、言いながらもアレスの手を握りしめたアオイの手は離れない。






「・・・アオイ様?」






「・・・・」






じっとアレスを見つめるアオイの動きがとまり、握りしめていた手に力がこもった。






「・・・どういたしました?」






カイがアオイの肩に手を置くと、我に返ったようにアオイが目をぱちくりした。






「アレスがけがしませんようにって・・・」






「お優しいんですね、ありがとうございます」





恭しく一礼したアレスは、カイとともに広間を出て行った。







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