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『由美、翔ける』
【スポーツ 官能小説】

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『由美、翔ける』-36

(桃子、ほんとに、用意してくれたけど……)
 22時を少し過ぎて、“月見荘”まで由美はやってきた。明日がオフ日になっているので、由美は、今日の練習が終わってから、寮で準備を整えて、この“月見荘”に来たのである。
 少しばかり時間が遅くなることは、既にメールで八日市には知らせており、“気をつけてくださいね”と、時間帯を心配する彼からの一言が、返信されていた。
 当然、外泊届けは提出済みである。
(ま、まあ、無理に今日使わなくても、大丈夫よね)
 そして、由美が肩から提げているバッグの中には、“お泊りセット”の他にも、桃子が用意した“悩殺グッズ”も、収納されていた。
「よっくん、きたわ〜♪」
 インターホンを鳴らしてから、預かっているスペアキーをつかって、玄関のドアを開ける。
「?」
 いつもだったら、主人の帰りを待ちわびていた子犬のように、喜色満面に出迎えてくれるのだが、それがない。
「よっくん?」
 靴はあるし、電気もついているので、部屋の中にいることは間違いない。由美は、怪訝な表情をしながら、そのまま靴を脱ぎ、キッチンを素通りして、レール式になっている居住スペースの部屋のドアを、開けた。
「!?」
「な、なにを、しているの?」
 八日市は確かにいた。ただ、なにやら耳を壁につけて、滑稽な姿勢をしている。
「あ、いえ、あの、これは……!」
 泡を食ったその様子は、“ビニール本(エロ本)”を見つけられた時と、全く同じ反応であった。
「ヘンな、よっくん。どうし……」
 そんな格好で、いったいなにをしているのか、問いかけようとしたその瞬間であった。

 『あ、ああっ、まーちゃん、まーちゃんっ!』

「!?」

 『き、きもちええのっ、そ、そんなに、つかれたらっ、ウチ、ウチ、しぬっ、しぬぅうううぅぅっっ!』

「!!??」
 “しぬ”という、穏やかではない単語ではあるが、それと前後して聞こえてきたいわゆる“エッチな声”が、八日市が壁に耳を貼り付けているその向こうで、何が起きているか、由美にはっきりと知らしめた。

 『あ、う、うしろ、からっ……んはっ!』
 『きよこ……』
 『うはぅ、おほぅっ、うぉっ、んほぉっ!』

「………」
 まるで獣のような、激しい交わりを隣人がしている。以前に、部屋で“すきやき”を共に食した、あの誠実さ溢れる“岡崎”の様子からは、とても想像がつかない。

 『あ、あかんっ、ウチ、このカッコ、あかんぅぅうおおぁああぁぁぁっ……しぬしぬしぬぅぅぅぅっっっ!!』

「!?」
 壮絶な絶頂の声が、響き渡った。八日市のように、壁に耳を当てていなくても、はっきりと聞こえる、“お隣の情事”であった。

 『ま、まーちゃん……あ、あかん……ホント、あかんのぉおおぉぉぉぉっ!!』

「は、はは、すごいですね〜」
 おそらく八日市は、その情事が始まったあたりから、壁に耳を当て続けていたのだろう。いくら由美と、膣でも口でも尻でも、ありとあらゆる場所で“エッチなこと”をしたといっても、性的な興味というものは、人を惹きつけてやまないものである。


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