『由美、翔ける』-13
『はぁ……はぁ……ん、ぐ……は、はぁ……』
重い下腹の違和感が、由美にとある衝動を生み出す。
『ぐっ、ぐううぅぅっ!』
腹筋に力が篭もって、直腸に埋まっているものを押し出そうとした。それは、“排泄行為”の時と全く同じ、異物に対する正直な身体の反応だった。
『んぐうぅぅぅっ!』
ぼちゅぼちゅぼちゅ、と、由美の息みにあわせて、まずは三つの球体が、お尻の穴から排泄された。
『い、いやぁ……!』
出てきたものは軟質プラスチックの物体だが、由美の身体に感じているものは、紛れもなく“排便”そのものである。お尻の穴を割り開いて出ていく物体を、“排泄物”として投影している由美の恥じらいは、震える臀部からもはっきりと映し出されていた。
『ぐ、う……んううぅっ……!』
ぼちゅぼちゅっ、ぶっ、ぶちゅっ……!
『み、見ないで……出るの、見ないでくださいっ……!』
括約筋に力を込める度に、軟質プラスチックで出来た“排泄物”が、由美のお尻の穴から数珠のように連なって飛び出していく。
『ぐうぅぅぅぅ!』
羞恥に咽びながら、それでも止められない括約筋の収縮は、結腸にまで至っていたその“マーブル・キャンディ”を、最後のひとつぶを残して、お尻の穴から排泄させた。
『!』
だが、その最後のひとつぶが、由美には排泄できなかった。強烈な力が外側から加わり、何度息んで力んでも、お尻の穴を盛り上げるだけで、外に出て行こうとはしなかった。
『や、やぁ……出ない……!』
それは、ひどい便秘をしていたときの“排泄”と、似たような感覚であった。
『!?』
ずぶずぶずぶずぶずぶっ!
『ひっ、ひいいいぃぃいぃぃぃっ!!』
だが、それと違うのは、出したはずの“排泄物”が逆入してくるという、信じられない感触だった。
『あ、ぐぅっ、ま、また、お腹の中にぃ……!』
最後のひとつぶが直腸に残っていただけの“マーブル・キャンディ”は、瞬く間にその全てを、由美の腸内に再び埋め込まれた。
『ぐううぅぅぅっ!!』
もう一度。括約筋に力を込めて、由美は、中に埋まったものを“排泄”しようとする。
『ん、ぐ、うぅぅっ!』
ぶりぶりぶりっ、ぶりゅっ、ぶりゅぶりゅぶりゅっ!
『い、いやぁっ、き、きたないおとっ……や、いやっ、き、きかないでっ!!』
あまりに力を込めすぎたのか、汚らしく水っぽい空気の音を漏らしながら、由美は、軟質プラスチックの“排泄物”を、次々とお尻の穴からひり出していった。
『はぁ……はぁ……はぁ……』
その衝撃と羞恥が、由美を朦朧とさせている。
『い、いや……もう、出したく、ない……』
まだ3つほど、腸内に埋まっている“マーブル・キャンディ”を認識しながら、息んで力むことが出来ない。
『ほ、ほんとのが……出ちゃう、から……』
身体の奥底が、擬似の排泄行為に反応して、本当のそれを引き起こしかねないことに、危機を憶えていたのだ。おそらく、かすかにその予兆を、由美はお腹に感じていたのだろう。
『あ、あっ、や、やめて……!』
“マーブル・キャンディ”が引っ張られるのを、お尻の穴で察知した。由美の背後にいる人影が、なかなか出そうとしない由美に業を煮やして、無理やりそれを引きずり出そうとしているのだ。
『お、おねがいっ、やめてぇっ……!』
ぶりっ、ぶりぶりっ……!
『ひぃあああぁああぁぁぁっ!』
遠慮という言葉など始めから存在しないかのように、由美の身体に残っていた“マーブル・キャンディ”は全て、背後の人影によって引き摺りひり出された。
由美自身は見えないが、引っ張り出された“マーブル・キャンディ”は、先端部分に茶褐色のまだら模様を貼り付けている。
『い、いやっ、いやいやっ、そんなこといわないでっ!』
“きたないものがついている”と、はっきり指摘されて、由美の羞恥は、最大の膨張を身体の中に起こした。
『あっ……』
やにわ、恐れていた違和感が、由美の下腹に生まれた。
『い、いや……』
“マーブル・キャンディ”によって、結腸付近まで苛められていたから、痺れた感覚がそこに残っていて、その違和感が下ってくるのを任意で制御できない。
『いや……いやぁ……』
それはやがて、直腸の中で凝結しあい、苛められたことで緩んだお尻の穴を、内側から容赦なく、抉じ開けようとした。
『いや、いやっ、いやいやいやっ……!』
どんなに体を揺すっても、それを止めることはもう、由美にはできなかった。
『おねがい、おねがい、見ないで、見ないで、見ないでえぇぇぇぇえぇぇ!!!』
“マーブル・キャンディ”が排泄された時と、全く同じ感触が“出口”を満たし、ぐわっ、と、お尻の穴が内側から隆起して、その口を大きく開いた。
そして、極めて太く長大な“汚塊”が、大蛇のようにその身をうねらせて、“汚臭”を漂わせながら、由美の“出口”からヌルヌルと這い出して、醜いとぐろを巻きだした。
…本当の“排便”を、由美は、してしまったのだ。
『いやああぁあああぁぁああぁぁぁぁっっっ!!』
この世の終わりを告げるような絶叫を零しながら、精神が汚辱に耐えかねたかのように、由美は、その意識をぷつりと途切れさせた…。