濃厚接触タイム-9
翌週、勤務先の新聞社から帰ってきた龍を玄関で待ち構えていたミカが言った。「龍、行くな、と言っても無駄だろうけど、」
「どうしたの?母さん。」龍が靴を脱ぎながら顔を上げた。
「真雪、熱出して寝込んでるんだとよ。」
「えっ?!」龍は叫んだ。「俺、行ってくるっ!」
その後のミカの言葉など全く聞くそぶりも見せず、龍はどたどたと階段を駆け上り、部屋に入ったかと思うと、あっという間に着替えと身の回りのものを詰めたバッグを持ってどたどたと階段を駆け下りてきた。
「これ、持ってけ。」ケンジが龍にパイナップルジュースのボトルを渡した。「真雪を大事にな。ケニーたちにもよろしく伝えてくれ。迷惑掛けんなよ。」
「わかってる。」龍は焦ったように靴を履いた。
「気をつけて行け。」ミカがそう言った時には龍はすでにドアを飛び出していた。
玄関に残ったミカはケンジに向かって言った。「ま、想定内ってとこだね。」
「だな。先週のあれで風邪がうつらないわけがない。」
「文字通り『濃厚接触』だっただろうからね。」
ケンジはミカの肩を抱いた。「俺たちもどうだ?『濃厚接触』。今夜。」
ミカはケンジを見てにっこりと笑った。「嬉しい。」
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