〈悲哀奴隷・銭森瑠璃子〉-3
『……オイ、聞いたか?コイツが俺達のチ〇ポを慰めてくれるってよぉ!』
部下達は架純に伸ばそうとした手を休め、専務の手招きのままに、未だ組み伏せられている瑠璃子の周りに陣取った。
「……アンタ達の用があるのは私でしょ?あの二人は関係無いはずよ……」
瑠璃子はグルリと囲んで見下ろしてくる鬼畜達を見回しながら、凜として応えた。
『……ほう?格好良いな……でもな、俺達は架純ちゃんのオマ〇コに興味があるんだ……』
偉そうな態度で片方の眉を吊り上げ、専務は瑠璃子を見下ろした。
あくまでも取引先のオヤジへのプレゼントは瑠璃子であり、架純はその船旅の中での性欲処理の餌食という位置付けを変えたくないとでも言いたげだ。
『……ところで、お前のその格好はなんだ?随分とオシャレにキメてるじゃないか?』
「……ッ」
……そうだ。
今日の瑠璃子は八代とデートのつもりでいたのだ。
可愛く魅力的に自分を見せる為、ヘアスタイルも衣服も、真剣に選んだのだ。
それは犯罪者に対峙するには場違いな衣服で、姉妹が事件に巻き込まれていた状況すら弁えなかった愚かな女そのもの。
『……まさか……八代と付き合ってたのか?お前の姉妹を売った男とヤッてたのかあ?』
「ッ!!!」
専務の言葉は図星だった。その言い当てられた時の瑠璃子の反応を、瞳の動揺を見逃す専務ではない。
部下の体重すら押し退けられない、ひ弱で愚かで刑事とは名ばかりの女を、鬼畜達は大袈裟に笑った。
『そうかそうか!ヤラれたくて此処まで来たってワケかあ?八代の〈女〉だけじゃ物足りないってコトかよ?』
「く…ぐぐぐ……!!!」
瑠璃子は悔しそうに歯を食いしばり、小馬鹿にしてくる専務を睨んだ。
あの日の瑠璃子の気持ちに嘘は無かった。
本気で八代を頼り、本気で愛しいと胸を高鳴らせていた。
その感情に罪などありはしないだろうが、しかし、結果としては裏切り者に身体を預け、女体の全てを曝け出した事に変わりない。
『お前が“その気”なら、架純ちゃんは助けてやってもイイぜ?なあ、お前らもそうだろう?』
『据え膳喰わぬは男の恥って言いますからね。満足させてくれたら手出しはしませんよ?』
『俺は架純ちゃんの方が好みだけど……我慢しますか?』
これは狙い通りと言っていいのか…?
瑠璃子がターゲットとなり、しかも架純の貞操を守る為という名分までも勝手に付けられてしまっていた。