剣士・カイU-1
キュリオがアオイを抱えて自室へと戻っていく様子をカイは遠目に見送っていた。王であるキュリオの部屋へと足を踏み入れることが出来るのは極一部の者だけで、そこから先へ立ち入ることはカイには許されていない。
仕方なくカイは、アオイが目覚めるのを眺めのよいテラスで待つことにした。
穏やかな風がカイの頬をなで、心地よい陽射しが眠気を誘う。深呼吸すれば、新緑の香りが胸いっぱいに広がり、体に活力を与えてくれるような気がした。何より、キュリオの力に守られたこの国はとても美しい。
普段のこの時間ならば、アオイと昼寝をしているのはカイだ。ある時は膝の上に頭を乗せて眠るアオイ。またある時はカイに抱きかかえられたまま眠るアオイ・・・。
キュリオの手が空いているときは、彼がアオイの面倒を見たがるため時折カイは暇をもてあそぶことになる。
(アオイ様、早く昼寝からお目覚めにならないかな・・・)
そんなカイが、物思いにふけっていると・・・
「おや?カイじゃないか。
アオイ様はどうした?」
後ろから声を掛けられて振り返った先には、キュリオの補佐をしている大臣の姿があった。
「大臣・・・
アオイ様はいま、キュリオ様とお昼寝中なんです」
「ほぉ。それでお前さんはそんなに寂しそうな顔をしているのか・・・」
穏やかな笑みを浮かべてカイの隣に立った対人の言葉に、カイは飛び上がった。
「お、俺別に・・・っ!!
寂しいとかじゃなくて・・・・」
「キュリオ様もお前もそっくりだな。私には、ふたりがアオイ様と共に過ごす時間を渇望しているように見えて仕方がないよ」
(キュリオ様も俺と一緒・・・か・・・・)
視線を下げて俯いてしまったカイの肩に大臣が手をのせた。
「カイ、お前にはお前しか出来なことがたくさんある。アオイ様にとってお前は身内も同然なのだから、あの笑顔が陰ることのないように誠心誠意尽くしなさい。アオイ様を守ることがキュリオ様に対する忠義でもあるんだ」
「身内・・・俺が・・・?」
「あぁ、お前はどう考えているかわからないが、アオイ様はそう思っているに違いないよ?」
カイに見せるアオイの顔は、キュリオに対するそれと遜色がない。